日本では、北海道や東北・北陸などが寒い地域として知られていますが、世の中にはそれと比較にならないほど寒い地域があります。
フィンランドやアイスランドなどは北極に近いですから当然寒いですが、標高が高くなればまた寒くなります。
そんな極端に寒いところでの暖房方法はどのようしているのでしょうか。
あまり聞いたことが無いので少し調べてみました。
この記事ではどこなのかは書いてありませんが、これらの地域は極端に寒いので大きな施設でお湯を沸かし、そこから各家庭に温水を送り暖房しているようです。
いわゆる、スチーム暖房(セントラルヒーティング)と呼ばれるものです。
集合住宅とか都市部で考えると、大規模なボイラーでお湯を沸かし、各家庭に送って暖房する。
そんな方式です。
ですが、なにせ大きい国なので、このような集中管理は大都市だけでしかやれないような気がします。
寒いのにお湯が届かないなんてことはよくある話のようですが、日本と違い極端に寒いので大丈夫なのでしょうか。
次の記事は、中国の内モンゴル自治区に住んでいる方のブログです。
内モンゴルの草原から〜Country life in Inner Mongolia
やはりマンションに住んでおられるので快適だと言ってますが、これも一部ではないでしょうか。
そんなに豊かな生活を現地の人々がしているとは王さん(ビジネスパートナー)から聞いていません。
しかも、今年は石炭の高騰で大変なことになっているようです。
内モンゴル、農牧民に暖房用石炭を公定価格で1世帯当たり2トン以上提供へ―中国
内モンゴル自治区能源(エネルギー)局は10月31日の取材に対して、同自治区人民政府は、冬を暖かく過ごすことができるようにと、暖房用に、農牧民に公定価格で1世帯当たり2トン以上の石炭を提供すると決定したことを明らかにした。
10月以来、中国の石炭価格が高騰を続け、中国の主な石炭の産地の一つである内モンゴル自治区オルドス市の農牧エリアでも、1トン当たり1600元(約2万8800円)から1800元(約3万2400円)以上となり、輸送距離が遠くなる周辺の盟・市では2000元(約3万6000円)以上となるケースも出ている。
同自治区エネルギー局の王金豹(ワン・ジンビアオ)局長は、「当自治区は、北方エリアの標高が高く、寒いエリアで、自治区民の冬の間の暖房確保は、最も必要な民生プロジェクト、民心プロジェクトであり、各級政府が負うべき責任でもあると考え、この決定がなされた」と説明した。(提供/人民網日本語版・編集/KN)
1世帯で一冬にどのくらい使うのか分かりませんが、1トン36,000円もすると経済的にかなり重いはずです。
1トンなんてすぐに使い切ってしまうでしょうから。
ましてや、中国内陸部の住民がそれほどの収入があるとは思えないですからね。
その意味では、やはり自然エネルギーの活用は必須と言えるのではないでしょうか。
太陽エネルギーなら、設備さえ作ればあとの燃費はタダですから。
太陽エネルギーで24時間暖房
さて、筑能科技社の2020年のカタログを見ると、地域暖房に関する大規模なシステムが出てきます。
たぶん、中国でもロシアのように集中管理で暖房をやっているので、それをイメージしてカタログに載せたような気がします。
ところが、2021年のカタログからはこの方式は消えました。
理由は分かりませんが、やはりこれが出てきたからではないかと思います。
つまり、このような大規模なことをやらなくても、ソーラーエアーヒーターにヒートポンプを使うことで、独立して24時間暖房ができるようになったわけです。
しかも低コストで。
氷点下40℃でも使えるヒートポンプ
ヒートポンプは、日本でもエアコンとかエコキュートに使われている技術ですが、北海道のような寒冷地での利用は効率が悪いようです。
気温が低いと霜がついてしまい、それを取るためにファンを逆回転させるらしいです。
エアコンで暖房をするときに、一時止まるのはそのせいでしょうか。
なお、ヒートポンプの仕組みについては以下の記事をご覧ください。
筑能科技社が、ヒートポンプを氷点下40℃の極寒地でも効率的に使えるように開発したのが以下の製品です。
単純にヒートポンプの性能を上げたと言うことではなく、ソーラーエアーヒーターを組み合わせたのが重要な部分です。
以下はカタログからの引用です。
従来のヒートポンプと太陽熱を加えた新製品との比較をしています。
(従来製品の概要)
これまでの製品は、太陽熱を使わないため氷点下45℃にもなるような地域では効率が悪く、電気代も高くつきました。
(新製品の概要)
筑能3コア2ステージヒートポンプは、太陽熱を利用することにより極低温下でも強力な加熱を実現、従来製品に較べ20%以上の省エネを達成した。
以下のグラフは低温下における従来のヒートポンプとの比較ですが、圧倒的に筑能科技社のヒートポンプが優れているかが分かります。
施工事例から
今回、施工事例が新しく提供されたので翻訳してみました。
まずは極寒地での事例で、最低温度が-29℃~-41℃、平均気温が-25℃~-30℃と言う日本では考えられない気温の中でのものです。
ちなみに、一番寒い「呼伦贝尔」とはどのあたりでしょうか。
北京の上で、モンゴルとシベリアに接している地域で、とんでもなく寒そうですね。
4か所の事例、いずれも凄まじく寒い場所なのですが、暖房費用は3元~6.5元/月/㎡とかなり安いことが分かります。
※元/円レート 2021.12.30 18.06円
次に、一般的な寒冷地区の事例です。
一般的となっていますが、4例とも平均気温が-10℃~25℃なので、北海道でも最北部と考えれば良いでしょうか。
さすがに極寒冷地よりも気温が高いだけあって、どのケースも暖房費用は3~4元/月/㎡まで下がってきます。
この中の銀川市は、この資料では2.94元となっています。
2.94×18円/元=52.92円/月/㎡
100㎡を暖房すると5,292円となります。
気になったのは施設の断熱状況。
全て不良となっており、これが改善されれば更に省エネになるはずです。
大規模な施設の暖房事例
これは青海省玉樹市称多県拉布多拉布寺の事例で、海抜3,780m、最低気温-33℃。
富士山の頂上よりも高いです。
<施設の規模>
総暖房面積:5,500㎡
施工期間:2019年10月18日~2019年12月21日
暖房設備:”太空1号”6台使用
<運用コスト分析>
運用開始日・時間 2019年12月20日 21:50
国家電力計開始時間:2020年4月12日13:49
運用日数:113.6662/日
暖房面積:5,500㎡
総電力量:217744/Kwh
単位暖房面積日電力消費量:0.348Kwh/㎡
単位暖房面積月電力消費量:10.44Kwh/㎡
単位暖房面積期間電力消費量:73.08Kwh/㎡
電力料金:0.28元/Kwh
単位暖房面積1日当たり費用:0.09744元/㎡
単位暖房面積月当たり費用:2.92元/㎡
5,500㎡の施設を24時間暖房するのにかかった費用は、日本円に換算すると以下の通りになります。
1日当たり費用 0.09744元/㎡×18円/元×5.500㎡=9,646円(小数点以下省略)
月当たり費用 2.92元/㎡×18円/元×5.500㎡=289,080円
期間当たり費用 運用日数:113日×9,646円=1,089,998円
建設費用が書いてありませんが、写真で想像すると、太空1号が6台、ソーラーエアーヒーターをそれぞれに各4台を配置してあるようです。
暖房形態が分かりませんが、単純に機材と配管程度なら1千万円もかからないと思われます。
まとめ
いまや全世界が自然エネルギー競争中であると言っても過言ではありません。
しかし、日本では未だに原発をベースロード電源などに位置付けており、西欧はおろか、中国にも大きく遅れてしまいました。
中国では太陽光発電だけでなく、太陽熱の利用も著しく進化を遂げています。
日本では中国とは違い発電ばかりを推進していますが、一体何をやっているのかと思います。
常識的に考えて、太陽熱を先に利用しなければ発電量を抑制することができます。
熱であろうと電気であろうと自然エネルギーですから、どちらも有効に利用しないとなりません。
その意味で、ソーラーエアーヒーターとヒートポンプを組み合わせる発想は秀逸です。
太陽の熱を太陽光発電で得た電気で更に温度を高め、-40℃にもなるような極寒冷地での暖房を100%自然エネルギーで達成したわけです。
これこそが技術革新であり、化石燃料を使わずとも自然エネルギーだけで生活ができる。
これほど素晴らしいことはありません。
日本は島国で縦に長く、自然エネルギーには恵まれています。
やれる能力は十分あるのに、既得権益に埋没してしまっていては道は拓けません。
細かな環境技術はまだ日本の方が上かも知れませんが、太陽熱利用に関しては中国に頭を下げて教わるべきと思います。
いいじゃないですか、これまで教えてやったんだから。
お互い様です。
(追加情報)
どのような暖房方法か、記載がなかったのでメーカーに問い合わせをしました。
一部の施設に床暖房にしたところはあるものの、ほとんどはスチーム暖房とのことです。
スチーム暖房とは、いわゆるセントラルヒーティングのことです。
セントラルヒーティングってどんな機能?効率良く暖める機能を解説
中国では石炭が一番安く、多くの家庭や施設で使われていますが、国策で脱石炭政策がすすめられているとのことです。
太空1号とソーラーエアーヒーターの組み合わせでは、石炭の半分程度の維持費だそうで、今後はさらに需要が見込まれると思われます。
それにしても、ボイラーに石炭なんて日本だと何十年も前の話ですが、それが一気にボタン一つで終わり。
中国の技術革新はかなりジャンプしていると言えそうです。
ま、ボイラーマンが失業してしまうかも知れませんが・・・