【輻射熱暖房】ソーラーヒーターを使いローコストで快適な暖房を考えた

12月に入りだいぶ寒くなりました。
こうなると心配なのが暖房費ですが、快適を求めれば際限なくお金がかかります。
なかでも床暖房や蓄熱暖房は、設備費がかなりの高額であり、まさにお金持ちの暖房方式と言えるでしょう。
私も貧乏なくせに太陽熱暖房をやりましたが、当然ながら設備にかなりお金がかかってしまい退職金が少なくなってしまいました。(苦笑)
ま、その後はそれを仕事にして技術的なノウハウを得ているので損はないのですが、使っていて感じることはメンテナンスを含めたランニングコストの重要性です。
一般的な床暖房や蓄熱暖房は、設備に多額の費用がかかるだけでなくランニングコストも大きいものです。
一方、太陽熱暖房も設備には200万円以上の費用がかかりましたが、ランニングコストは最小です。
しかし、特殊なシステムなのでメンテナンスに関しては未知数で不安があります。
動かす機器(コントローラやポンプ・バッテリーなど)が何年持つのか、壊れたら交換が可能か、その費用はどれくらいなのか。
少なくとも15~20年くらいは使えるものと思いますが、耐用年数が来た時には再び大きな出費を強いられることになります。
その時に金銭的な余裕と作ってくれた建築士が健在であれば別ですが、そうもいかないはずです。
そんなわけで、これから太陽熱で暖房を検討している方に参考になる、ローコストで且つメンテナンスフリー、交換も自分でできる蓄熱暖房を考えて見ました。
新築やリフォームの時に考えてみてください。
(目次)
1.ソーラーエアーヒーターで蓄熱暖房
2.動くものは電動ファンだけ
3.PCM(相変化材料)とは
4.まとめ
1.ソーラーエアーヒーターで蓄熱暖房
私が提案したいのは、ソーラーエアーヒーター(太陽熱温風器)で蓄熱暖房することです。
もちろん、こんなことは誰もやっていません。
ざっくり説明すると、床下に敷き詰めた砕石に温風を送ることで熱を蓄え、そこから発生する輻射熱により家を暖めるものです。
一般的にソーラーエアーヒーターを暖房で使う場合には、下図のようなイメージとなるのですが、エアコン暖房と同じように、空気が循環するので嫌がる人が多いのです。
また、空気を温めるだけでは冷めるのも早く、輻射熱暖房のような温かさを感じません。
そのため、床暖房や蓄熱暖房(電気)が人気があるわけです。
問題なのはコスト。
設置にも多額のお金がかかりだけでなく、ランニングコストにも半端ではないお金がかかります。
それと、夏は使わないのも非効率で贅沢な設備と言えるでしょう。
そんなことから、暖かく快適、且つランニングコストが安い暖房はないものかと考えました。
たぶん、これまでの技術でやろうとするならまず無理です。
しかし、ソーラーエアーヒーターならできそうです。
下の図をご覧ください。

太陽熱温水器温風暖房 イメージ図
採熱の仕組みは、ソーラーエアーヒーターで採熱、電動ファンを使って循環、熱を床下の砕石に蓄熱する構想です。
床下にある砕石から発生する輻射熱がコンクリート版を通過し、床だけでなく家全体を暖めます。
これは、私がやっている太陽熱暖房からヒントを得て、蓄熱を温水から砕石に置き換えたものです。
砕石やコンクリートが蓄熱に適していることは知られており、さらに漏水や水の補給など水を使うよりも扱いやすい。
肝心の採熱器や電動ファンなどは、故障や経年変化で問題が生じても交換が非常に簡単なので、それほどの大きな出費にはならないはずです。
また、床下の砕石は何百年経過しても変化はありませんし、配管に鋼管を使ったとしても空気循環なので錆びることはほとんどありません。
参考に、私がやっている太陽熱温水暖房(エクセルギー暖房)の仕組みをご紹介しておきます。
エクセルギー暖房については、採熱器と床下の貯湯タンクを循環させる配管やポンプ、制御盤(コントローラ)も専用のものが必要となりますので、単純のように見えてもかなりの費用と時間がかかります。
そして、なんと言っても高度な専門知識が必要になるので素人がメンテナンスをするわけにはいきません。
この方式の最大の利点は、床暖房や蓄熱暖房などが部屋の一部に限られることに対して家全体が暖かくなることです。
床と壁・天井までがほぼ同じ温度になりますから、一般的な暖房システムとは違って穏やかな暖かさです。
一方、最大の欠点は水を使うこと。
太陽熱温水器を使い、熱エネルギーを床下に移動させるのはメリットでもあるのですが、そのために配管の漏水や凍結などの懸念が常時つきまとい北海道のような寒冷地では使えません。
せいぜい私の住む北関東まででしょうか。
2.動くものは電動ファンだけ
凍結や漏水、この問題は水を使う限り発生します。
それを克服したのがソーラーエアーヒーターによる空気循環方式です。
下の写真は、実験のため電動ファンで温風を発生させているシーンですが、真空管の中にPCM(相変化材料)が入っていて、冷風が通ると反応して熱が発生します。

採熱及び送風実験
※この実験では手前に温風がでるようになっていますが、接続は反対方向にすることもできます。
効果的な蓄熱を行うためには、電動ファンをタイマーで連続運転ではなく、一定時間おきのインターバル運転すること。
連続運転をしてしまうと、真空管自体は採熱はしますが、PCMに蓄熱させることが難しくなります。
PCMは一定温度に達しないと相変しないために、一定時間空けることが必要となります。
そのように考えると、30分間隔で10分程度の運転とすれば蓄熱と電気代の抑制が両立できます。
なお、必要な設備、材料は以下のようなものです。
- ソーラーエアーヒーター
- 電動ファン(シロッコファン)
- 配管材(鋼管)
- 保温材 グラスウールなど
- 4号砕石
- タイマー
ソーラーエアーヒーターの暖房の目安は、メーカーの説明では1台で50㎡がとされていますが、当社での施工事例がないため実際のところは確認できていません。
しかし、300L用の温水システムでは30本のパネル1枚が標準なので、ヒートパイプ方式(36本)より高性能であることが分ります。
これまでの経験(PCM温水器)からして、これは信用しても良いと考えています。
3.PCM(相変化材料)とは
さて、PCMとは一体何なのでしょうか。
具体的に、メーカーが公表していないのでどのような材料なのかは不明ですが、蓄熱と放熱を繰り返す物質であると説明しているのが下の図です。
(翻訳)
是依靠物质相变过程(固/液态转化)中必须吸收或放出大量相变潜热的物理现象进行能量的存储和解放释,最常见的相变蓄能材料PCM就是”冰/水”了。
物質の相変化プロセス(固体/液体変換)中に、エネルギーの貯蔵と放出のために相変化の大量の潜熱を吸収または放出する必要があるという物理現象に基づいています。最も一般的な相変化エネルギー貯蔵材料PCMは「氷/水」です。
可相当于同体积水変化1度贮能量的100倍
これは、同じ体積の1度の水素化分解のエネルギー貯蔵量の100倍に相当します。
可实现恒温供热,相変过程温度恒定
プロセス中に一定温度の加熱、一定温度を達成できます。
上記の説明は、中国語なので分りにくいと思いますが、要するに最初は固体で、熱を吸収すると液化し、放熱すると再び固化する。
そのように書いてあるわけです。
もっと簡単に説明すると、熱を受けると液体となり蓄熱します。
これに冷風をあてると熱を発生する。
つまり、冷風をあてなければずっと熱ではない形で熱が存在するはずですが、実際には採熱が終わった時点からゆっくりと放熱をしていくようです。
お湯が冷めていくような感じと考えて差し支えないと思われます。
ただし、もっとゆっくりのようですが。
なお、PCMの耐久性については記述していませんが、半永久的に劣化することはないと聞いています。(真贋不明)
4.まとめ
暖房は燃料を燃やせば簡単にできるものですが、太陽熱で行うとすればかなりの技術が必要になります。
以前、床暖房に太陽熱温水器を組み合わせたいとの要望があったのですが、私にはどう考えても費用対効果が悪過ぎてやる意義を見出せませんでした。
一方で私のやっている太陽熱温水暖房(エクセルギー暖房)にしてもメンテナンスの点で疑問があるわけです。
水を使っている以上、採熱器だけでなく配管の錆びや水漏れ、劣化、あるいは電気設備等々を考えれば到底素人には扱えません。
理想的にはユーザーがメンテナンスできるのが望ましいと思います。
今回考えたソーラーエアーヒーターによる蓄熱暖房は、空気循環のための配管は鋼管なので水に触れなければ簡単には錆びることはなく耐久性も抜群です。
たとえ錆びてもΦ100mmですから空隙が無くなり空気が通過しなくなることはないはずです。
そして、真空管採熱器や電動ファンが故障した場合も交換は簡単、素人でもできますから何十年と使えるのではないでしょうか。
ま、このようなことを披露しても、事例や実績などで確実に効果が判断できるのでなければ誰もやらないことは分かっていますが、世の中は広いので勇気のある人もいるかと思います。
実行してみたい方はお問い合わせください。
(追伸 2020.10.27)
2021年の後半になりますが、ソーラーエアーヒーターでお湯を沸かす話が進んでいます。(那須塩原市)
いよいよ陽の目を見ることができるかも知れません。
また、給湯と暖房が同時に使える新製品もできましたので、興味のある方はこちらの記事をご覧ください。
#自然エネルギー #太陽熱 #ソーラーエアーヒーター #PCM温風器