農産物の乾燥はどのようにしていますか。
天日干し、それとも電気乾燥ですか?
天日乾燥ならコストは最小限で品質も最高ですが、天候次第で必ずしもうまく行くとは限らないのが残念なところです。
電気乾燥は天候に左右されないメリットは大きいですが、電気代に見合う価格で売れないと損してしまいます。また、一般的に品質は天日乾燥に及びません。
自家消費する程度のことなら失敗してもやり直せばいいのですが、商売となるとそうもいきません。
今回は天日乾燥の質を保ちつつ、ローコストで野菜や果物を乾燥させるアイディアをご紹介したいと思います。
天日乾燥をやったことのある方は分かると思うのですが、一番簡単なのはシイタケとか切り干し大根などです。
ですが、良く晴れた日が数日間続かないと、十分に乾かないばかりか途中でカビてしまうことも多々あります。
私も何度失敗したことか。
干し柿とか柚子の陳皮などうまく行ったことなどありません。
ネットなどではカビない方法がたくさん出ていますが、現実はそう甘くはありませんよね。
- 天日乾燥は難しい
- 早く乾かすテクニック
- いろいろ乾燥してみた
- 乾燥施設をつくる
- まとめ
1 天日乾燥は難しい
当たり前の話ですが、お天気は気まぐれです。
こちらの都合のいいようには晴れてくれることは稀で、たとえ天気が良かったとしても、急に雲ったり雨が降るなんてこともままあります。
そのため天気予報を気にしながら乾かすことになりますが、実際問題、商売であればよほど雨の降らない地域でないと難しいのではないでしょうか。
さて、我が家の柚子が大豊作です。
大豊作なのは嬉しいのですが食べきれないし、あちこちに配ってもそれでも余るほどですから何とか加工しなければと思うわけです。
柚子の乾燥で有名なのが「陳皮」ですが、これは皮を剥いて白い綿を取ってから乾燥させます。
しかし、手間ひまかけた割りに上手くいきません。(買うと高いです)
柚子皮の乾燥は天気の良い日を選んで2~3日くらい干したくらいでは、十分な乾燥は無理なんですね。やってみれば分かりますが、天気が続かないとすぐにカビたり、色も黒ずんできます。
なので、一般的には天日乾燥などしていたら商売にはなりません。
しかし、うまくいけば商品価値としては非常に高くなりますし、ビタミンBなどが多く味も良くなると言われます。
2 早く乾かすテクニック
柚子に限らず、干し柿やかんそう芋などを、変色させず綺麗に作るにはできるだけ早く乾燥させる必要があります。
もちろん早く乾燥させるだけではダメなのでしょうが、水分の多い初期の乾燥をできるだけ短時間で済ませるのが良いのではと考えました。(間違って知るかも知れませんが)
そこで、ソーラーエアーヒーターを使って乾燥させてみることにしました。
これは太陽熱を採取・蓄熱できるもので、送風ファンにより熱を送り出して使います。
特徴は、冷風を当てなければ熱は発生せず、好きな時間に使うことが可能です。(永久に蓄熱されるわけではありません)
下の写真をご覧ください。
ビニール温室を使った簡単な乾燥施設です。
ソーラーエアーヒーターと接続し、内部の温度を上げて乾燥をより早くしようとするものです。
<乾燥手順>
1.簡易温室とソーラーエアーヒーターを風管で繋ぐ
2.電動ファンでソーラーエアーヒーターの下部から空気を送り込む
3.PCMが反応して熱風が上部のヘッダーから温風がハウス内に入る
4.タイマーを使って一定時間置きに繰り返す
純正の電動ファンの作動音がうるさくて使い物になりませんでしたので、一般的な換気扇を使用しています。
不良品だったのかも知れませんが、本番では日本製を使った方が無難と考えています。
なお、温度管理については、50℃以上になると良くないと教えてもらったので、このような密閉度の低い状況では45℃以上になることは稀でした。
また、できるだけ温度が一定になるよう小さな循環用のファンを常時回すようにしました。
これが案外効果がありました。
3 いろいろ乾燥してみた
早速、この乾燥施設を使って柚子の陳皮やスライス、シイタケ、リンゴ、干し柿などをやってみました。
いずれも難度の高いものばかりです。
まずは柚子の陳皮ですが、カビることもなくきれいにできました。
陳皮を作るのはかなり難しく、これまで何度も失敗していますので、ここまで綺麗にできたのは初めてです。
これは柚子のスライスです。
初めて作りましたが、厚く切ってあるだけでなく、水分が多いのできれいに乾燥させるのが難しいのは陳皮以上でした。
見映えも良く、焼酎のお湯割りに浮かべると美味しいです。
次はシイタケです。
シイタケは、生のままだと一日でひだが変色して味が落ちてしまいますから、出来るだけ早く食べるか調理して冷凍保存しなければいけません。
なので、やはり乾燥が簡単で栄養価も上がり一番です。
出来は素晴らしく、ぜひシイタケ農家さんには検討してもらいたいですね。
今回の実験で一番嬉しかったのが干し柿です。
干し柿は子供のころから食べていますが、当時(半世紀以上も前)は秋から冬にかけて晴天が続くだけでなく、気温も低かったのであまりカビることもありませんでした。
しかし、最近は地球温暖化の影響で干し柿を吊るすころはまだ暖かいことが多く、すぐにカビてしまうことが多いです。
いくら熱湯を通してから干しても数日でカビてしまうし、単なる天日乾燥では難しいと感じていました。
今回使ったのは、栃木県では人気の蜂谷柿。
大きくて干し柿には最高の品種ですが、水分が多いせいか特にカビやすい。
なので、皮を剥いた直後、速やかに水分を飛ばすことがキレイで味の良い干し柿を作るコツであることは間違いのないところでしょう。
結果は、実に良好で最高の干し柿を食べることができました。
4 乾燥施設をつくる
と言うことで、野菜や果物は生で食べるのが一般的ですが、全てを生で消費できるわけでありません。
そのため様々な加工品として流通していますが、中でも乾燥品は軽く取り扱いが良いだけでなく高値で取引されます。
一方、生産者としても生で売りきれないものや規格外品を乾燥して販売したいのでしょうが、電気乾燥施設を作るとなるとかなりのコストがかかります。
なので、天日乾燥を基本にしつつも、ソーラーエアーヒーターを追加してみたらどうでしょうか。
施設の規模にもよりますが、さほどコストはかからないはずです。
5 まとめ
柚子は薬味には最高ですが、それ以外は面倒でも陳皮かジャム、それでも使い切れなければ柚子風呂くらいです。
ですが、今回はソーラーエアーヒーターを使って、厚めの柚子スライスを簡単に乾燥させることできました。
乾燥した柚子スライスは非常に固くなります。
もちろん保存性は抜群で、そのままお湯に入れて飲めば風邪の予防になりますし、蜂蜜などを加えればさらに美味しく飲めます。
同じようにリンゴやキウイフルーツも、平行して乾燥させましたが非常に良くできました。
水分の多い果物は多少時間はかかりますが、とても美味しいです。
特にリンゴチップは売っているもの(電気乾燥)と違って柔らかく、甘さと酸味だけでなく香りの良さに驚きました。
もちろん、乾燥は天日だけで乾燥できる時もありますが、商品とするには素早く安定的に乾燥させなければなりません。
でも、大量の燃料や電気を使ったのでは、高く売れれば良いでしょうが、たぶん採算は合わないでしょう。
採算性が商品化のネックになって、乾燥物が生産されず消費されないのはなんとも惜しいと思います。