4月になり、桜も咲いてようやく春らしくなってきました。
気温もだいぶ上がってきたので、太陽熱暖房を中止して、この熱を太陽熱温水器に向かわせることにしました。
切り替えたのは3月31日。
この日は非常に天気が良かったためかなり高い温度になりました。
通常でも33℃くらいにはなったはずですが、暖房の熱でほぼ倍の66.1℃となりました。
これはどのくらい暖房の熱が使えたのでしょうか、少し考察したいと思います。
温度が倍になったと言うことは、私の使っている分離分割型(ベランダ型)と同じ熱量ということになります。(真空管の径は58mm×0.85m×32本 貯湯タンクは150リットル)
暖房用の真空管の長さが1.8mありますので、単純計算すると16本分相当の熱量になります。
暖房用に使っている真空管は全部で95本ですから、
16/95=0.168
全体の約17%が太陽熱温水器に熱交換できたことになります。
残りは自然界に還ってしまったわけですが、太陽熱とは改めて凄い熱量だと思いました。
(目次)
1 熱交換装置とは
2 太陽熱暖房の考え方
3 太陽熱温水システム
4 暖房と給湯の両立
5 まとめ
熱交換装置とは
ちなみに熱交換する装置は以下のようになっています。
写真では網をかぶせてあるので中身が見えませんが、長さ2.5mのステンレスタンクです。
この中に太陽熱(蒸気)を入れて熱交換する非常に単純なものです。
手順は、
1 太陽熱暖房の採熱器のタンクから熱(蒸気)を加熱タンク(ステンレス製)に送り込む
2 加熱タンクの中に太陽熱温水器の循環系の配管を挿入する
3 この配管はステンレスに変更
4 外装は放熱を防ぐため断熱材で保温
※カラスが来て荒らすので網をかぶせてあります。
なお、この装置の欠点は、給水や排気の際のバルブ操作が面倒なこと。
暖房装置にはついていないもので、私が追加したためあまり見栄えが良くありませんけれど、機能的には十分です。
下の写真をご覧ください。
これは太陽熱暖房用の採熱器ですが、上部のタンクに水が入っています。
現在は暖房を使っていませんから、真空管からの熱で沸騰します。
当然ですが蒸気が発生するのでタンク内の圧力が増し、一方がふさがれているためこの蒸気は加熱タンクに向かいます。
問題は、良い天気が2~3日続くとで水が空になってしまうので補給する必要があること。
給水は、太陽熱暖房のスイッチを入れてポンプを回せばいいだけなのですが、やり過ぎると水が溢れるので1~2回で止めないといけません。
もちろん給水は自動でできるようにしたかったのですが、改造にお金がかかるので断念しました。
面倒ではありますが、慣れればどうということはありませんが・・・
※ポンプを冬モードにして1~2回ほど動作させて給水します。
ただ、これから自然エネルギーを使っていくためには便利でないと普及しませんから、どんなシステムが良いのかを考えてみたいと思います。
2 太陽熱暖房の考え方
まず太陽熱で暖房する方法です。
以前によく質問を受けたのは、タンク一体型の太陽熱温水器で床暖房をしたいと言うことでした。
確かに床暖房は快適ですが、ランニングコストがかなりかかるので、太陽熱で一部を補うことは発想として悪くはありません。
しかし、現実問題として暖房に使う熱量が大きすぎるわけです。
たかだか200リットル(浴槽程度)の水を、たとえ50℃までにしたところでどれだけ部屋を温かくすることができるか、少し考えれば分かるはずです。
ちなみに、私の太陽熱暖房は以下のようになっています。
屋根に載っている真空管採熱器は95本。(写真の採熱器は変更しています)
これで床下のタンク(1t×3か所)の水を循環させて温め、その輻射熱を利用して暖房を行うシステムです。
このシステムは確かに快適ですが、この設備は冬しか使わないのが残念なところです。
一年中使うならもっと積極的にやるべきでしょうが、現状ではあまりにも不経済であり、安易にやれるものではありません。
ということで、これから太陽熱暖房をするなら以下を提案します。
以下のイラストをご覧ください。
これはソーラーエアーヒーター(PCM温風器)を使って暖房をしているものですが、非常に単純なシステムとなっています。
温風を部屋に送りこんでいるだけですから、必要な機器は電動ファンとタイマーくらいなもので、費用も安く済みますし管理も楽です。
天気が良い日なら、太陽熱を一日中部屋に送り込んでおけば別の暖房器具を使わないことも可能なはずです。
もちろん、冬の早朝や夜には気温が下がるので太陽熱だけでは十分ではありませんが、それでも家が温まっていれば暖房器の燃料(電気)代は大幅に減ります。
また、ソーラーエアーヒーターはPCM(相変化材料)に蓄熱するので、夜間でも使える優れものです。
メリットは挙げると、
1 凍ることがないので極寒冷地でも使える
2 PCM(相変化材料)で蓄熱しているので時間差で使える
3 電動ファンだけで動作する
4 耐久性が高い
5 メンテナンスが容易
6 DIYで設置できる
(参考)
次にお薦めの製品をご紹介します。
これは真ん中に風道があるタイプ(イラストにある製品と同じです)で、真空管が60本(30本×2)あるので採熱量は十分あります。
ざっくりですが、晴天なら灯油2リットル程度の熱量が得られます。
データを見ても素晴らしいですね。
次は太陽熱温水器を考えます。
3 太陽熱温水システム
気温の高い夏に、散水ホースを日に当てておくと水が熱くなります。
これを見れば、太陽熱で温水を簡単が作れることは誰でも分かるはずだと思います。
しかし、このように太陽熱で簡単に温水を作ることができても、実際にお風呂や台所で自由に使えるようにするには太陽熱温水器が必要となります。
これには一体型と分離分割型がありますが、今回のテーマが「暖房と給湯の両立」なため分離分割型を説明します。
この方式は、一般的には「太陽熱温水システム」と呼ばれています。
採熱器と貯湯タンクが分かれているタイプで、採熱(循環系)に不凍液を使えば極寒冷地でも使える利点があります。
また、タンクと分離されていることから設置の自由度が高く、耐久性も優れていますが価格は高くなるのであまり普及はしていないのが実情です。
この図から分かるように、タンクに水道水が接続されています。
採熱系は別となっていて、循環ポンプで水(不凍液)を循環させタンク内で熱交換します。
こんな優れたものが普及しないのはなぜなのかよく分かりませんが、最大の理由は高額なのと、設置する業者が少ないこともあるようです。
しかし、設置するのには配管技術があれば十分にできるので、使わない手はないのではと思います。
4 暖房と給湯の両立
今回、私が提案する暖房と給湯を両立させるシステムは以下のようなイメージです。
これは上記の説明から分かるように、ソーラーエアーヒーターと分離分割型の太陽熱温水器の組み合わせです。
このように、かなり単純なシステムで太陽熱暖房と給湯ができることが分かると思います。
上記を読んでいただければ、改めて詳しい説明必要はないと思うので、どのように暖房と給湯を両立させるかを解説します。
1 暖房はソーラーエアーヒーター(PCM温風器)の温風で行う
2 冬が終わったら、バルブ操作で太陽熱温水器の循環系に設置してある加熱タンクに熱を向かわせる
3 電動ファンのタイマーを日中に合わせる
以上、これだけ。
太陽熱温水器の方は何も操作する必要はありません。
暖房に水を使っていないので簡単にシステムが構築でき、新築時なら屋内配管ができますから、コストだけでなく維持管理にも非常に有利です。
熱交換方法に関しては、ステンレスタンクをわざわざ用意する必要はなく、径10cm程度のステンレス管(3m程度)に通せば問題ないはずです。
この方が保温も楽ですね。
機器の購入費用に関しては、現在のような円安の状況では従来に比べ高い(×1.5以上)ですが、ある程度の量を輸入できれば格段に安くなります。
大量輸入は、私のような個人事業主では無理ですが、需要が多くなれば大手さんがやるかも知れません。
なお、現状で考えるならソーラーエアーヒーター(真空管30本)と分離分割型の太陽熱温水器(200L)なら120~130万円もあれば購入できると思います。
機材だけを買って自分で設置すれば、メンテナンスも自分でできるので、長い目で見れば安いと私は思います。
いつか・・・を待っていたのでは人生が終わってしまいます。
5 まとめ
最後に、世間では自然エネと言えば電気ばかりを騒いでいますが、極論を言えばどんなに太陽光発電などが高効率になってもすべてのエネルギーを賄えることはありません。
その理由は簡単で、たくさん電気が作れればたくさん使うからですね。
もちろんそれで、私たちの生活が豊かになればいいのですが実際にそうなっているでしょうか。
反対にどんどん電気代が高くなっています。
やはり、私たちはできるだけ電気を使わないようにしないと搾取されるばかりです。
電気をできるだけ使わないようにすることは簡単で、先に述べた太陽熱を利用して給湯や暖房をすれば従来の半分以下になることは私が実証済みです。
つまり、個人個人が太陽熱を利用して給湯や暖房をし、その不足する分を電気とすることによって電力需要が大幅に減ります。
そうなれば、当然価格が下がる可能性がでてきます。
もしも電気料金が下がらないなら、そのときは自家発電を入れるべきで、自家発電では冷蔵庫や暖房など電気を大量に消費するものは使えませんが、それでも照明やTV程度なら十分に使えます。
その程度なら大して費用がかからず太陽光発電ができますし、万が一の時にも電力会社のお世話にならなくて済みます。
私たちは、生活のエネルギーの全てを電気で賄うことの愚かさを東日本大震災で痛感したわけですが、あれから13年が経過し忘れかけています。
便利な生活には落とし穴があることを、常々考えながら生きていくことが大事ではないでしょうか。