とちぎエネットでは、太陽熱利用機器(主に太陽熱温水器)の販売を始めて9年になります。

近年はネットでの販売がほとんどのため、様々なご質問を受けることになります。

なかでも、「太陽熱温水器は元が取れるか」と言う質問が多いので、少し解説をしておきたいと思います。

太陽はタダのエネルギーだけど

さて、太陽エネルギー(太陽光)は全世界の誰もが使えるタダの燃料です。

あまり意識はしていませんが・・・

でも、実際に太陽熱を使うとなるとそう簡単ではありません。

太陽エネルギーを利用するには、温水なら太陽熱温水器が使われます。

太陽熱温水器と言うと、屋根に載っているあれか。

と思うかも知れませんが、それはかなり古い型のもので、今は真空管式太陽熱温水器が主流です。

真空管式太陽熱温水器(加圧型)

これは冬でも採熱能力が高く、よほどの寒冷地なら別ですが凍結はしません。

そのため、一年中使え、非常に効率の良いものです。

そして、衛生面を気にされる方もおられますが、それも全くの誤解です。

このように、水道水を太陽熱温水器を迂回して温めるようになっています。

ただそれだけです。

インナータンクはステンレスですから、衛生上の問題は生じません。

また、温度が高くなり過ぎて、給湯器が壊れるなんて話もまことしやかに流れていますが、それも嘘です。

ミキシング弁で温度調整されてますから、そのようなことは全くありません。

このように、太陽熱温水器で水温を上げる仕組みはいたって簡単です。

しかも間にポンプも無く、電気も使いませんから故障の心配もありません。

あるとすれば漏水とか凍結くらいでしょうか。

それはメンテナンスすれば良いだけです。

昔の人の知恵

太陽の光を浴びたら、季節にもよりますが暖かいとか暑いと感じるでしょう。

でも、それで終わってしまってはもったいない。

タダで使えるエネルギーが目の前にあるのですから、真っ先に使いたいものです。

実は、現代人は便利な生活に慣れ過ぎてしまい、あまり意識していないとは思いますが、昔の人はあの手この手で太陽熱を集めて利用していました。

専門的で申し訳ないのですが、温水ため池なんてものもそうなんですね。

栃木県の那須にある観光地で有名な「りんどう湖」も農業用の温水ため池です。

正式な名称は、江戸川用水温水ため池。

これは、冷たい水では稲の育ちが良くないので、ため池を作って水を温めてから用水路に流しているわけです。

りんどう湖

このように、まず太陽エネルギーを使うことを基本と考えれば経済効果が理解しやすくなります。

生活において一番使うのは温水ですから、どうやったら燃料費を節約できるか考えましょう。

話は簡単なんです。

水温を上げればいいだけの話ですから。

経済効果の計算

前置きが長くなりましたが、一般的な太陽熱温水器200Lを設置するケースで元が取れるかを考えてみましょう。

設置費用(本体・設置費)50万円

※現在では円安のため高騰しています

まず、ここで重要なのは年間どのくらいの燃料費(ガス・灯油など)を使っているかです。

年間20万円ならば、その半分を節約できたとすると10万円が浮きますから5年で元が取れる計算になります。

簡単ですね。

しかし、燃料費が年間10万円の家庭なら元を取るのに10年かかってしまうわけです。

そんなに遅くては耐用年数が来て、やる意味がないじゃないか。

と思われるかもしれません。

でも、仮にそうでもプラマイゼロですから損はありません。

むしろ、価格変動に悩まされずに済んだ面も大きいですから無駄ではなかったはずです。

昨今の燃料費の高騰を考えると、マイナスになるようなことはまずあり得ません。

他所の家庭はよく分かりませんが、給湯に係る年間の燃料代は10万円以上だと思いますから、遅くとも7~8年で元は取れるのではないでしょうか。

あとは継続して何年使うかになります。

おおよそ15年も使えば十分にお釣りが来るでしょう。

なお、太陽熱温水器は動くものがないので、メンテナンスさえしっかりやれば20年くらいは持つと思います。

事業に使う場合

それから、事業に使う場合は悩む必要はありません。

きちんと利益が出るような設備にすれば良いのです。

事業の場合は、燃料消費が家庭とは比較にならないほど多いのでメリットは大きくなります。

年間の燃料代が半減するような設備にすることで、簡単に元が取れます。

お湯を使う業種には、 理容・美容室、飲食店、銭湯などがありますが、他にもたくさんあります。

以下の記事は、ゆば工房に300リットルの用の採熱器を設置した事例です。

ガスを燃料として使っているため、かなりの費用がかかっているはずですが、太陽熱温水器を導入すれば2~3年で元がとれる計算でした。

このように太陽の力を借り、水の温度を上げたうえで目的の温度にすれば、劇的に燃料費は少なくなります。

太陽熱温水器であればお湯しかできませんが、PCM温風器なら暖房にも乾燥機にもなります。

タダの燃料を使わないのでは儲からないですよ。

灯油やガスが高騰していますから、今さら遅いと思わず考え直した方が良いと思います。

一般家庭ではソーラーエアーヒーターは元がとれない

それからソーラーエアーヒーターですが、暖房に使って元を取ろうなんて考えてはいけません。

なぜなら、そもそも暖房には生産性がないからです。

一年中使うならまだしも、冬だけしか使いませんから、どう考えても元が取れる計算にはなりません。

このようなものは、できるだけ灯油やガスのの消費を減らしたい、薪ストーブをやっているが薪の消費を減らしたい人が使うものです。

でも、住宅の設備の一部と考えると、あっても何の不都合もありません。

私は200万円以上もかけて太陽熱暖房をやっています。

初期投資を考えると躊躇はしましたが、後悔はしていません。

家ごと暖房していまうので、燃料代はかつての3割くらい。

燃料が少しくらい高騰しても、そもそもの消費が少ないですからをあまり心配しないで生活ができています。

まとめ

以上、太陽熱温水器やソーラーエアーヒーターで元は取れるかをお話ししました。

しかし、素朴な疑問としてどのような給湯器が元がとれるのでしょうか。

あったら教えて欲しいと思います。

そもそも必要なものを得るためにやることですから、自分で作り出せない以上お金を使う必要があります。

私は順序が逆だと思っています。

まず太陽熱温水器があって、それだけではすべての熱量を賄えないのでガスや灯油に頼るわけです。

そして、燃料費が大幅に少なくなると言うことは、給湯器の稼働時間が短くなること。

具体的な数字は難しいですが、間違いなく耐久年数は伸びると思われます。

昨今、世界情勢が緊迫してこれまでのように安く石油や天然ガスが入手できなくなっています。

また、自然環境保護の観点からも太陽熱をもっと積極的に使いませんか。

初期投資は大変かも知れませんが、安心料と思えば安いものです。

(2022.12.22追記)