これまで太陽熱の利用は、太陽熱温水器などでの給湯に限られていました。
もちろん、太陽で沸かした温水を使えば暖房にも使えますが、うまく行った事例は少ないように思います。
ソーラーエアーヒーターは、太陽熱を蓄熱し、温水ではなく、温風で使うことのできる画期的な製品です。
PCM(相変化材料)という特殊な材料を使い、蓄熱と放熱を繰り返します。
空気が熱媒体のため凍結の心配がなく、どんな寒冷地でも使うことができます。
これは非常に革新的なことで、氷点下-40℃になるような場所でも使え、家庭や事業所の暖房や給湯だけでなく農産物や木材の乾燥などアイディア次第でその用途は非常に幅広いものです。
(目次)
1.ソーラーエアーヒーターとは
2.採熱性能
3.使い方
4.一般家庭向けの標準型(真空管60本)のデータ
5.耐久性とメンテナンス
6.DIYで簡単に設置できる(動画)
7.価格
1.ソーラーエアーヒーターとは
ソーラーエアーヒーターは、真空管採熱器の中にPCM(相変化材料)をが入っており、太陽熱を熱ではなく別な形にして蓄える装置です。
しかし、別な形でと言っても分かりにくいので、以下の図で説明します。
PCMは相変化材料のことで、Phase change materialの略です。
PCMは当初は固体ですが、熱を受けると液状化します。(この時点で熱が熱ではない形で保存されます。)
次に、この状態から冷風を送る(温度を下げる)とPCMが反応し熱を発生します。
最終的に熱が放出されると再度固まります。
この繰り返しです。
なお、PCMは安定した物質なので何度でも繰り返して使え、劣化はほとんどないと言われています。
真空管及びPCMの構造は写真のようになっています。
使われている真空管は、一般的な温水器のものと違って、風を通すために先端が螺旋状になっています。
以下の図は、蓄熱棒と空気の流れを示しました。
採熱の仕組みは、真空管内にあるPCMに太陽光が当たり、温度が90℃に達すると採熱(液状化)が始まります。
放熱は、上部のヘッダー(空洞)に電動ファンで空気を流すと、真空管の先端から空気(60℃以下)が流れ込むとPCMが発熱します。
左から空気を送った場合には、右から温風が出てくるようになっています。(右からでも同じです)
2.採熱性能
それでは、どれだけの能力があるのかを説明します。
右側の標準タイプ、ZNー30D58-1800で説明します。
※ZN-20D58-1800は現在製造されていません。
構成 真空管Φ58mm 長さ1.8m 30本
集熱面積 4㎡
総蓄熱能力 33MJ(最大蓄熱能力)
総得熱量 30MJ(使うことのできる熱量)
実際に使えるのは、総得熱量の方で30MJになります。
これは灯油1リットルくらいの熱量換算になります。
パネル1枚当たりの採熱能力について
カロリー(Cal)に変換 30×0.24=7.2Mcal(7,200,000Cal)
1Calは、1ccの水を1℃上げる能力がありますから、1リットルでは7,200℃、100リットルなら72℃上昇します。
つまり、200ℓの温水器なら35℃となり、水温が10℃なら45℃、20℃なら55℃になります。ただ、PCM温風器は蓄熱量で表示しているので日中に使う量が加味されていません。
なので、日中に使えば蓄熱能力プラスαが期待できることになります。
ただし、これは日照条件に大きく左右されるのでメーカーとしては無視しているようです。
3.使い方
使い方は、前述のとおり電動ファンで風を送り発熱させます。
暖房の目安は、住宅の断熱構造にもよりますが30~50㎡とされています。
日中に不在であるなら、帰宅後に温風が使えるのは非常に大きなメリットではないでしょうか。
なお、暖房に使う場合、リレータイマーを使って間欠運転することをお薦めします。
具体的には、朝の8時半くらいから18時くらいまで、20分おきに電動ファンを5分運転します。
そうすることで、採熱と放熱を繰り返しますので、最大量の太陽熱を得ることができます。
夕方帰宅したときに、部屋の温度が10℃以下なんてことが少なくなります。
4.一般家庭向けの標準型(真空管60本)のデータ
ここでは、一般家庭向けの製品であるNFJ型(ツインパネルで横向き)について解説します。
(採熱データ)
以下のデータはNFJ型(真空管60本)のもので、8時30分から18時18分まで、20分間隔で出風温度と暖房能力を測ったものです。
いずれも13時過ぎくらいにピークとなり、次第に下降する結果となっています。
繰り返しになりますが、これは灯油やガスを燃やすようなものではないと言うことです。
灯油やガスなら燃やすことで熱エネルギーが発生するのに対し、太陽熱の場合は先に蓄熱ができていないと使えません。
データだけを見ると同じように見えてしまいますが、20分おきに数分間測定しているにすぎません。
つまり、5分間ファンを回したとすると、15分間は蓄熱していることになります。
このようなことを理解したうえで、上記の表を見ていただきたいと思います。
この製品は蓄熱量が70MJなので、灯油換算2リットル強の熱量となります。
大したことないと思われるかも知れませんが、一般住宅で夜間に2リットルの灯油を一晩で消費することはあまりないと思います。
以下の図は設置の一例です。
5.耐久性とメンテナンス
次に耐久性について考えます。
一般的に使われている太陽熱温水器の真空管は既に20年以上の実績があるそうです。
螺旋真空管は新たに開発しているので、せいぜい6年くらいの実績と考えられます。
しかし、特殊なのは螺旋の部分だけでなので、一般的な真空管式太陽熱温水器と同等の15年は問題ないと思われます。
それから肝心のPCM(相変化材料)ですが、これは前述したように安定した物質なので液化、固化を繰り返しても劣化はしないと言われています。
メンテナンスに関しては、水を使っていないため非常に簡単です。
例えば、真空管が割れたとか真空が抜けたようなトラブルがあっても、その真空管を引き抜いて交換するだけです。
水を止めたりするような煩わしさもなく、漏水や凍結などのトラブルは一切ありません。
それから、過集熱(熱を取り過ぎる)の心配皆無ですから長期間留守にしても安心していられます。
暖房には冬期間だけしか使いませんが、春から秋まで放置しておいてもなんら問題はありません。
6.DIYで簡単に設置できる(動画)
組み立ての動画です。
特殊な工具なしでできますから、業者に頼む必要もありません。
メンテナンスが必要になったら、この逆をやればよいわけですが、あっけないほど簡単に組み立てられることがお分かりいただけます。
7.価格
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