こんにちはnonofhoです。
今日は新しい原子炉の話題を取り上げたいと思います。
新しいと言っても昔からある技術で、実現が困難だったためにお蔵入りしたもののようです。
それを中国がこれから始めると言うニュースを目にしたので、どんなものか調べることにしました。
溶融塩を使った原子炉
ご承知のように、原子炉とはウランを燃料として熱を発生させ、その熱でタービンを回して発電します。
二酸化炭素を排出せず、大量の電気を作れるのはいいのですが、問題は使用済み核燃料の処分ができないこと。
そして、事故が起きた時、チェルノブイリ原発や福島第一原発のようにメルトダウンを起こすと地球規模の甚大な被害が発生します。
これから中国がやろうとしている「新たな原子炉」とはメルトダウンが原理的に起きないと言うものです。
しかし、本当にそんな安全と言える原子炉などあり得るのでしょうか。
2021.7.23 ナゾロジーの記事から
(引用開始)
原子力発電については、福島原発の事故など安全性に対する不安があります。
とはいえ、脱炭素を掲げる現代社会では、原子力に頼らないわけにはいきません。
そこで安全な次世代原子炉が世界中で研究されていますが、その実現に一番に漕ぎ着けそうだという国が現れました。
香港紙サウス・チャイナ・モーニング・ポストは、中国政府が、冷却材を必要とせず安全性が高いとされる商用トリウム溶融塩原子炉の設計を発表したと報道しています。
中国政府の計画によると、2030年までにゴビ砂漠や中西部の平原にこの原子炉を建設する計画で、最終的には他国への輸出も検討しているようです。
原理的にメルトダウンを起こさないという、この安全性の高い溶融塩原子炉とは、一体どういうものなのでしょうか?
目次
原発事故はなぜ厄介なのか?
発電所には、火力、水力、風力、原子力とさまざまな方法がありますが、すべてやっていることは同じで、タービンを回して発電しています。
磁石が導線の周りで動くと電気が生まれるというのは、小学校の理科でも教わることですが、発電所は結局この原理を利用しています。
人力自転車発電も原子力発電も、そういう意味では規模が違うだけでやっていることは同じです。
水力や風力は、自然の力でそのままタービンを回しているのでわかりやすいですが、では火力や原子力はどうやってタービンを回しているのでしょう?
それは、高熱を発生させてお湯を沸かし、その水蒸気でタービンを回しているのです。
ある意味蒸気機関ですね。
原子力発電は、原子炉圧力容器に入っている個体のウラン燃料棒が核分裂をおこして周りの水を熱して水蒸気を作ります。
また、この水が冷却材として燃料を冷やす役割も担っています。
福島原発の事故では、電源がすべて失われたことで、この冷却材の水が正しく循環せず、どんどん蒸発してしまい、燃料が露出して高温になってしまいました。
これはその後、建屋の水素爆発やメルトダウンという事故につながってしまいました。
原子力発電に危険が伴うのは、事故が起きて電源が失われてしまった場合、この燃料の冷却や核分裂反応を完全に制御することが難しくなるためです。
加熱した燃料が溶け落ちて容器を突き破り、外に出てきてしまうことをメルトダウンと呼びます。
その後も燃料は高熱を保ち続けるため、なんとかして冷やさなければ事態を収めることはできません。
福島原発では露出した燃料を未だに水で冷やし続けているため、大量の汚染水をどうするかが問題になっています。
燃料をうまく制御して、事故が起きた際には速やかに冷やすということが、安全に原発を運用するためには重要なのです。
そこで、次世代の原子力発電として注目されている技術の1つが、冷却材を必要としない溶融塩原子炉です。
では、この原子炉はいったい普通の原子炉と何が違うのでしょうか?
冷却材を必要としない原子炉
燃料を冷やすのが大事と言っていたのに冷却材がないってどういうことよ?
と思うかもしれませんが、溶融塩原子炉では、燃料自体を液体として循環させることで、燃料自身を冷却材として利用しています。
溶融塩というのは、数百度以上に加熱して液状となった塩のことです。
これを核燃料となるトリウムに混ぜて液状の核燃料としたのが、今回中国が設計しているトリウム溶融塩原子炉です。
下の図が、だいぶざっくりしていますが溶融塩原子炉の仕組みです。
液体となった燃料に発火材として少量のウランを混ぜ、黒鉛で作ったトンネル状の原子炉内を通過させると、黒鉛が反射材となって核分裂が起こり、溶融塩が加熱されます。
この加熱された溶融塩が熱交換器でお湯を沸かし水蒸気を発生させます。
これがタービンを回します。
溶融塩は、再び循環して原子炉に戻り加熱されて熱交換器でお湯を沸かします。
ここで重要なのは、燃料自体が冷却材の役割も担っているということです。
溶融塩燃料は、沸点が700度近くあるため、水のような高圧で運用する必要がありません。
また核分裂反応を起こすのは原子炉の黒鉛に包まれたときなので、それ以外のところでは核分裂反応が進みません。
このため、電源が止まって循環が停止すると、自然と核分裂反応が止まるのです。
原子炉内の燃料は重力で原子炉の外に落ちていきます。(通常は原子炉の下にはドレンタンクという設備を用意する)
この方法だと原理的にメルトダウンは起こらないと考えられ、もし燃料が漏れるようなことがあったとしても、この燃料は空冷されて速やかに固体化するため環境への拡散もほとんど起こりません。
溶融塩原子炉は、原理もさほど難しいものには思えず、いいことばかりに見えます。
では、なぜいつまでも実用化されなかったのでしょうか?
溶融塩原子炉の実用化が難しかった理由
実は溶融塩原子炉というアイデア自体は、1940年から存在していて、日本やアメリカを含め世界中で研究されていました。
しかし、ネックとなったのは溶融塩に対する耐食性のある素材が見つからなかったことです。
溶融塩原子炉の配管は、金属の腐食性が強い溶融塩を高温で流し続けるという過酷な環境で使用されます。
実際に溶融塩原子炉は建設されたこともありましたが、配管がすぐに腐食してしまい、長期的な運用はできなかったのです。
そのため、今回の中国が打ち立てた成果というのは、1000℃近い温度のトリウム溶融塩の放射に耐え続けることができる合金を開発したという部分が非常に大きいようです。
こうした技術的問題を解決させたことで、中国政府は溶融塩原子炉の建設を承認しました。
パンデミックにより予定より計画が遅れたようですが、2021年9月にはプロトタイプの建設が完了する予定とのこと。
このプロトタイプは2MWの電力しか生成できないようですが、理論的な部分が実現されれば、その後今回設計された本格的な商用原子炉の建設に移るということです。
そちらの生成可能な最大電力は100MWで、これは通常の原子炉より少ないものの約10万世帯に電力を供給するのに十分な発電量です。
さらに、この溶融塩原子炉の大きな特徴は、非常に小さいということです。
設計に携わった上海応用物理学研究所のヤン・ルイ(Yan Rui)教授によると、蒸気タービンなどの施設は別として、原子炉自体の大きさは、高さ3メートル、幅2.5メートルでバスルームと同じくらいのサイズだといいます。
この小型サイズは、原子力潜水艦のような軍事兵器においても、有用な技術になる可能性があります。
燃料に使われるトリウムは、レアアース鉱石の精錬時に副産物として出てくるため、中国にとっては容易に手に入れやすいというメリットもあります。
また、トリウムを使った燃料は、核兵器への転用ができないため、原子力技術の輸出商品としても魅力的なようです。
脱炭素を目指しつつ、安定した電力供給を確保するためには、原子力を利用することは避けられません。
安全な原子炉が早く実用化されるといいですね。【編集注 2021.07.23 11:00】
(引用終了)
これまでの原子炉よりも簡単な仕組みのように見えますが、更に深い技術は解説されていません。
ですが、すでに一度作られているようですから技術的に実現不可能ではないようです。
そして、太陽熱発電でも使われていた「溶融塩」がここでも使われています。
具体的な技術は、
>そのため、今回の中国が打ち立てた成果というのは、1000℃近い温度のトリウム溶融塩の放射に耐え続けることができる合金を開発したという部分が非常に大きいようです。
詳細はありませんが、この部分の解決が実用化によって一歩踏み出したようです。
本当に安全か
しかし、これまでの原子炉に較べ本当に安全なのか。
専門家と言う人の多くは嘘つきですから、私は「はい、そうですか」とはなりません。
反論記事を探したら、やはりありました。
2019年12月23日 Gigazineより転載します。
安全で廃棄物が少ないとされる次世代原子炉「トリウム溶融塩炉」の現実を専門家が指摘
(要約)
2020年アメリカ合衆国大統領選挙の民主党候補を争っているアンドリュー・ヤン氏が、「トリウムはウランよりも核燃料として優れている」と発言し、トリウム溶融塩原子炉を推進していく意向を示しました。ヤン氏の発言について、テネシー大学原子工学部のニコラス・R・ブラウン准教授がファクトチェックを行っています。
◆主張1:トリウムはウランよりも豊富に存在し、トリウム溶融塩炉は従来のウラン原子炉よりも経済的
ブラウン准教授いわく、この主張は「間違い」とのこと。トリウムがウランよりも豊富というのは事実ですが、そもそもウランにかかる費用は、原子力発電所のコストのほんの一部で、コストのほとんどは「原子力発電所自体」の費用です。トリウム溶融塩炉の開発コストはウラン原子炉よりも安価ではないそうです。
なお、そもそもトリウムは容易に核分裂する同位体が存在しないため、直接的に核燃料として使用することはできません。それゆえ、トリウム溶融塩炉は、「トリウムをウランに変換して、ウランを核分裂させる」という反応でエネルギーを生成しています。
◆主張2:トリウム溶融塩炉は、現行の原子炉よりも安全
スリーマイル島原子力発電所事故などの事故は発生しているものの、アメリカの既存のウランを燃料とする原子力発電所はアメリカ国内の全電力の約20%を発電する能力を有しており、優れた安全記録を保持しています。溶融塩原子炉は確かに現行の原子炉を上回る安全性を有していますが、安全性の向上はトリウムを使っていることが原因ではなく、設計の進歩が原因とのことです。
◆主張3:トリウム溶融塩炉からの廃棄物はウラン原子炉からの廃棄物よりも処理しやすい
2014年に発表されたアメリカ合衆国エネルギー省の包括的研究によると、トリウム燃料サイクルはウラン燃料サイクルに似た核燃料サイクルを有しており、その廃棄物は10万年近く放射能を持ち続けます。以上の理由から、「トリウム溶融塩炉からの廃棄物が処理しやすいというのは間違っている」とブラウン准教授はコメントしました。
◆主張4:トリウムは核兵器に転用しにくい
アメリカ合衆国エネルギー省の国家核安全保障局が資金提供した2014年の研究によると、トリウム燃料サイクルの副産物、特にウラン233は核兵器の材料として優秀だそうです。また、2012年のケンブリッジ大学の研究は、「トリウム燃料は核兵器を拡散させる」と結論付けています。
主張5:「温室効果ガス排出量ゼロ」を達成したい場合、新しい原子炉の建造が必要
ブラウン准教授は、「この主張は真実です」とコメント。温室効果ガスをほとんど排出しない発電方式としては太陽光発電、風力発電、原子力発電が挙げられますが、太陽光発電や風力発電は状況によって供給できる電力にブレが生じる一方、原子力は常時発電できるという利点があります。そのため、「『温室効果ガス排出量ゼロ』に取り組む場合、老朽化した原子炉の置き換えだけでなく、原子炉の新造が必要です」とブラウン准教授は主張しました。ただし、上記の理由から、「新しい原子炉はトリウムを動力源にする必要はありません」と付け加えています。
(転載終了)
この記事ではトリウムを使った原子炉をほぼ否定していますが、どちらを信用していいのか分かりません。
さらに、このような記事も。
2012年に書かれた記事では
これは福島第一原発が事故を起こした翌年の記事ですが、なかなか興味深い内容となっています。
かつてアメリカのオークリッジ国立研究所で開発されたものの、歴史の闇のなかへと消え去ったまぼろしの原発「熔融塩炉」。2011年に中国が本格的開発に乗り出すことを発表した失われたテクノロジーは、本当にクリーンでグリーンで安全なのか? かつて福島第一原発3・5号機の設計を担当し、現在は世界を舞台に「トリウム熔融塩炉」の可能性を推進する原子力工学の専門家・吉岡律夫先生に訊いた。2012.05.03 THU 12:00
──オークリッジ国立研究所で1960年代に実際に稼働していた「熔融塩炉(MSR:Molten Salt Reactor)」が、ここ10年ほど大きな注目を集めるようになってきました。また、トリウム燃料の可能性も近年盛んに語られていますが、いわゆる「トリウム熔融塩炉」がいまこうして注目される理由は何なのでしょう?
世界における原子力発電の問題は何よりもまず、燃料として用いたプルトニウムの処理処分です。アメリカを中心に日本も、高速増殖炉によってその燃料を再利用できるようにすることをもくろんできたわけですが、これが開発開始から50年近く経ってもめどが見えない。そこでトリウム熔融塩炉が注目されるわけです。というのもトリウムは放射性物質なのですが、自ら核分裂は起こしません。そこでトリウム(Th232)からウラン233を生み出す必要があるのですが、その火種としてプルトニウムを使用することで、プルトニウムを消滅させることができるのです。
──トリウム熔融塩炉を使用すれば、プルトニウムを燃やしながら新たなエネルギーを生み出すことができる、ということですか?
そうです。現状における原発の計画は、軽水炉から出るプルトニウムを高速増殖炉で再処理して再び使うという「ウランープルトニウム・サイクル」を前提としたものですが、それがうまくできないことによって、プルトニウムの処理処分の問題が大きくなり続けています。加えて、核拡散の問題もあります。ところが「トリウムーウラン・サイクル」ですと、処理の問題も、核拡散の問題も解決できるのです。
──核兵器に転用できないということですか?
不可能ではありませんが、トリウムからはごく少量のプルトニウムしか生まれません。加えて、トリウムからウラン233とともに生成されるウラン232は強いガンマ線が発生しますから、検知が容易だということも兵器利用の抑止という観点からはメリットです。
──トリウムは世界中で採れるのでしょうか?
世界中のほとんどの国で採掘できます。残念ながら日本では採れませんが、実はトリウムは、電気自動車やハイテク機器に欠かせないレアアースに含まれているもので、現在世界中で発掘されているレアアースの副産物としてすでに年間1万トンほどが採掘されています。けれども放射性物質ですから処分に困ってるわけですね。それを利用できるとなると燃料問題はおよそ片付いてしまいます。というのも、年間1万トンのトリウムで100万kWeの原子力発電所を1万基稼働できてしまうからです。
──安全性はどうでしょう?
トリウム熔融塩炉というのは、LiF-BeF2というフッ化物熔融塩に、親物質としてのトリウムと、核分裂性物質のウランまたはプルトニウムを混合し、それを液体燃料として用いるものです。つまり燃料が液体で、それ自体がすでに溶けているわけですからメルトダウンという状況が起きません。また熔融塩は、沸点が1,500°Cという高温で、かつ化学的には空気と反応したりすることがありません。これはどういうことかというと、水の場合、温度を上げようとすると圧力をかけないといけませんけれど、そういった操作なしに簡単に扱えるんですね。だから炉心の外壁にしたって、軽水炉のように分厚いものである必要がないですし、福島のように水蒸気や水素が容器や格納室にたまって爆発するようなことがないのです。
──とはいえ、福島のようにすべての電力系が失われたら、やはり危険ですよね?
もちろん危険ではあります。液体燃料とはいえそれ自体は放射線を出していますから。ただ、爆発要因はありませんから、セシウムなどの放射性物質が空気中に飛散するといった状況は起こりません。燃料の温度が上がりすぎて、かりに容器を溶かして外に流れ出しても一定期間で放熱をし終えると固体となって固まります。その間、なんらかの方法で冷却する必要はあるでしょうけれど、オークリッジではプールのようなものの中に自動的に燃料が流れ込むようなことを考えていたようです。
──トリウムを固体燃料として現状の軽水炉で使用する、という可能性はありませんか?
トリウムに関する国際会議で、フランスのアレバ社の担当が言ってましたけれど、トリウムを軽水炉で利用するメリットはあまりないんです。というのも、固体のトリウムは再処理をしてウラン233を取り出すのが難しいんですね。つまり増殖することができないんです。ですから、トリウムをただ燃やすだけになってしまいますし、併用するウラン燃料からは新たなプルトニウムも発生しますから問題の解決にはなりません。熔融塩炉で液体として利用すれば増殖が可能で、かつプルトニウムも燃やすことができる。トリウムを利用するなら、熔融塩炉がいちばん理にかなったやり方です。
──なぜ、これほどいいことずくめの技術が、日の目を見なかったのでしょう?
それが核兵器に使えないからですよ(笑)。と、もうひとつあるとすれば、熔融塩っていうのは化学の範疇なんですよ。そもそも軽水炉を含めた原子力発電所っていうのは、一種の「化学プラント」であって、本当は電気屋さんではなく、化学の専門家が扱うべきなんです。それはワインバーグもウィグナーも言っていたことで、日本でいち早くトリウム熔融塩炉の可能性に気づいた古川和男先生も言っていたことです。古川先生は1960年代からナトリウムの世界的な権威だったわけです。その人から見ると、ナトリウムを利用した高速増殖炉はきっと危なくて仕方のないものに見えていたはずで、一方、不活性な熔融塩がよさそうだというのは直観でわかっていたんですね。だから先生は、オークリッジの熔融塩実験炉を見て「自分の直観は正しかった」と思って帰ってこられたわけです。
──古川先生は原子力研究所で高速増殖炉の研究をされていたんですよね?
そうです。ただ、軽水炉と高速増殖炉は国の既定路線ですから、ある時期からはだいぶ煙たがられていたみたいですね。それと違うもののほうが優れていると考える人は、あまりありがたくなかったんじゃないでしょうか。
──吉岡先生はなぜ熔融塩炉に?
わたしは70年代に原子力の世界に入りましたが、当時は高速増殖炉に夢がもたれていた時代で、わたしもそうだったんです。以後、高速増殖炉を少し手がけた後、主に軽水炉の設計をやってきたわけですが、90年代初頭に、高速増殖炉はなんでこんなに長く研究をやってるのに結果が出ないんだ、そもそも無理があるんじゃないのか、と思うようになったんです。そのころ古川先生の研究に出合って、自分でも計算してみたら、これは正しいなと思えたんです。
──ところで、本誌でワインバーグ博士を取り上げることに驚かれてましたね(笑)。
スティーブ・ジョブズならともかく(笑)、ワインバーグ博士の記事をつくると聞いて驚きました。ふたりの共通点を挙げるとするなら、未来を見据えた天才だということでしょうか。ワインバーグは軽水炉の発明者でした。世界の原発の生みの親と言えるでしょう。その彼が、軽水炉の危険性やプルトニウム問題を50年前に指摘し、安全でプルトニウム問題もないトリウム熔融塩炉を推進したわけです。
──日本でトリウム熔融塩炉が、実現する可能性はありますか?
古川先生に初めてお会いしたときに言われたのは、日本は問題じゃないということなんです。つまり日本は人口がこれからどんどん減っていきますが、世界はそうじゃない、ということです。アジア、アフリカといった地域の人たちの生活レヴェルが上がっていったときにどう電力を供給するか、これを考えるのが先進国としての日本人の務めだと、こう言われたんです。世界を考えなさいと。ですから、わたしも原発の未来に関する議論においては日本のことはあまり考えてません。
──日本の原発業界は世界の状況はあまり考えてこなかった、ということになりますか?
ええ。日本の原子力産業っていうのは、結局、日本国内の需要だけで成り立っている極めて内向きなもので、いまになって輸出だなんて言って四苦八苦してますけれども、いままで海外に出たことなんかないわけですから、それも当たり前です。熔融塩炉に関して言うと、日本には熔融塩の研究者は他国と比べるとたくさんいますし、黒鉛の専門メーカーもある。そのほか鉄鋼技術や高温融体の研究なども進んでいます。つまり日本がリードできる要素技術はもっているわけですし、それを新しい産業へと発展できるんです。中国が開発に乗り出すというのなら、日本の技術力を生かすいい機会だと思いますよ。本当は原子力研究所などがやるべきなんですが、高速増殖炉と軽水炉の路線が法律で決められちゃってますからね。
──福島の事故は、世界に脱原発の動きを促した、というようなことはないんですか?
残念ながら、その方向は難しいでしょう。80億とも90億とも言われる膨大な人口増加によるエネルギー需要を賄うための現実的な方策としては、原子力以外にいま有効な手だてはありませんから、その研究・開発を止めるという選択肢はありません。もちろん並行してさまざまな研究も行うべきだと思いますが、福島が与えた教訓を生かしながら、そういう世界全体の動きについていく以外の道はないように思います。
さいごに
正直、いまさら安全な原子炉などと言われても不信感は消えません。
たとえメルトダウンをしなくても核廃棄物の処理はどうするのでしょう。
軍事転用が難しいと言いますが、それも怪しいものです。
もういいでしょう。
核燃料の廃棄もできない原子力発電を使うなら、電気の消費を減らす努力をすべきと思います。
いつも言っているように、電気でお湯を沸かさない。
これで何割も電気の消費を減らせるはずです。
そうすれば、これから車もガソリンから電気に置き換わっていくでしょうが、屋根に太陽光パネルがあれば大部分は足りるでしょう。
そして、遠方は交通機関を使えばなんの不都合もありません。
いずれにせよ、核を使った発電には賛成できませんね。
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