ソーラーエアーヒーターは、太陽エネルギーを蓄熱して温風を発生させるものです。

太陽熱温水器のように水に熱を蓄えるのではなく、PCM(相変化材料)という特殊な素材に蓄えることで、温風で使うことが可能となりました。

温風なので、温水のような取り扱いの難しさが無いばかりでなく、凍結や漏水などの心配もありません。

そのため、アイディア次第で太陽熱を様々な目的に使えます。

一般的には暖房目的で使用することが多いわけですが、そうなると使う時期は限られてしまい、遊んでしまう時期が多くなってしまいます。

勿体ないので、できれば年間を通して使い、燃料の節約もしながら新たな商品を開発をすれば一石二鳥ではないでしょうか。

そこで、今回は以前に柚子の乾燥をやってみた結果から考えてみたいと思います。

農産物の乾燥物は高付加価値

私が考える農産物の乾燥物で価値が高いと思うものは、トマトやリンゴです。

他にもたくさんありますが・・・

ドライトマトやリンゴチップなどは高値で販売されているのはご存じだと思います。

ただ、あまりに高すぎて売れていないような気がしますが、安くできれば売れることは間違いなさそうです。

そのためには電気や燃料をあまり使わない、手間を最小限にする方法をとる必要があります。

実際、野菜や果物は水分が多く簡単には乾燥しませんから、フードドライヤーなどを使って乾かすわけです。

しかし、電気代がかなりかかってしまうわけです。

しかも、強い熱量で短時間で仕上げるために、かなり味が落ちてしまうのも残念です。

身近な例では、シイタケがあります。

天日干しと機械乾燥では味に大きな差があるだけでなく、価格も全く違います。

もちろん菌床と原木栽培の違いも大きいですが・・・

ただ、たくさんの電気を使って作っているのに、天日乾燥よりも品質が悪く値段も安いなんておかしくないですか。

仕方のないことでしょうか。

私はそうは思いません。

天日乾燥は燃料費はタダですが、カビたり腐ってしまわないよう、季節や天気を見ながらなので手間暇はかなりかかります。

一方、機械乾燥の場合は時期を選ばず、たくさんの量を一度に乾燥させることができます。

しかし、味が落ちて価格も安くなってしまう。

生で売れない分を乾燥するので、安くても仕方がないなんて思っていませんか。

こんな状況を変えるには、天日乾燥にソーラーエアーヒーターを組み合わせることでかなり改善します。

実は、我が家には柚子の木が1本ありまして、写真のようなキレイな柚子がたくさん生ります。

そのため消費が追い付かず、どうしたものかと思案したところ柚子のスライスの案が浮かびました。

秋の味覚 柚子

ネットで調べると、数は少ないですが見つけることができます。

けっこう良い値段でしたので、うまく行けば商売になると思いました。

簡単そうなのでやってみました。

作り方は、5mmくらいにスライスしたものを扇風機に当てて乾燥します。

乾燥する場所はサンルームです。

サンルームは、11月でも太陽が出れば35℃以上になりますから、乾燥にはちょど良い温度になります。

つまり、ソーラーエアーヒーターを使って温風を送っている状態を作っているわけです。

乾燥が完了した柚子スライス

サンルームでの乾燥なので、完全に乾き切るには1週間くらいかかりましたが、ソーラーエアーヒーターを使えば3日くらいで済むのではないでしょうか。

良くできたので、試しにネットで売ってみました。

60gで650円の価格設定でしたが、数人の方に購入していただきました。

60gの乾燥品は、生の柚子では3個分くらいです。

良いものは生で売り、規格外は乾燥させればすぐに売る必要がなくなります。

それから、陳皮も作ってみました。

これは初期の乾燥を急がないと色良くできませんが、ソーラーエアーヒーターを使えば簡単です。

柚子スライスよりも、皮だけなのでずっと楽です。

ただ、皮を剝くのが面倒ですが・・・

そもそも陳皮は貴重品で、天日干しともなれば更なる高値で取引が期待できます。

これも販売をしたところ、業者と思われる方から大量に用意できないか問い合わせがありました。

もちろん無理なのでお断りをしましたが、柚子の生産農家なら可能なはずです。

付加価値をつけて売るのは、いつの時代でも同じではないでしょうか。

設備を考える

さて、それではどのような設備を用意したら良いのでしょうか。

もちろん天日乾燥を目指すのですから、天井から太陽光が燦燦と入ってくるサンルームのような建物を作れば良いわけです。

そんなに難しくはありません。

筑能科技のカタログから

事例はかなり大きな乾燥施設なので、ソーラーエアーヒーターを2台使っています。

また、補助熱源も用意してあります。

屋根が書いてありませんが、南側をところどころペアガラスにでもして、太陽光が入るようにすれば良いでしょう。

もちろん、規模が小さければソーラーエアーヒーターは1台で良いとは思いますが、可能なら補助金を利用して余裕を持たせるべきです。

うまく使えば、天日乾燥に近いかそれ以上の良質な乾燥物ができるはずです。

美味しいドライトマトとリンゴチップの作り方

さてさて、他の事例も書いておきます。

ドライトマトを作ったときの写真が見つかりませんが、ミニトマトで実験をしています。

半分に切って塩を振りかけ、水分を出してから乾燥させると早く乾くだけでなく、非常に美味しくできます。

リンゴチップは、ソーラーエアーヒーターを使い作ったことが何度もあります。

リンゴチップ 右が温度センサー

矢板市はリンゴの名産地なので、道の駅などでリンゴチップを売っています。

ですが、電気で短時間で乾燥したものは堅くて食べにくいものです。

甘みもイマイチですね。

ところが、写真のリンゴチップは柔らかく、甘みと香りが全然違います。

色よく仕上げるには、皮を剝いてスライスしたら塩水に浸します。

そうすると、甘みが増すだけでなくあまり黄色くなりません。

あまり長時間干すと色が茶色くなってくるので、出来るだけ短時間で仕上げるのがコツのようです。

食べきれない分は冷凍保存します。

水分がほぼ無いので、冷凍庫から出してすぐに食べられます。

まとめ

昨年からの燃料費や電気料金の爆上りは、これからの生活や生産に深刻な影響が起こることは間違いありません。

生活においては、収入が上がりませんから燃料や電気をなるべく使わないで支出を減らす以外にありません。

農家であれば、燃料や電気代を考え採算に合わなければ施設園芸などは止めざるを得ません。

エネルギーが安く買えた時代は終わり、これからは地産地消ができる太陽熱を本気で利用しないと生計が成り立たないと私は思います。

ただ、太陽熱利用機器もほとんどが中国で生産されています。

円安が更に進むと、とても高くて買えないなんてことも現実味を帯びてきました。

2022.3.31 円/元レート

いずれこんなことが起きるとは想像はしていましたが、これほど早く現実になるとは思いもよりませんでした。

商売もし難いですね。

消費税は廃止!

言っても無駄かも知れませんが・・・