とちぎエネットです。
今回は真空管式 太陽熱温水器を使って、バイオマス(豚糞)からメタンガスを発生させた事例をご紹介します。
バイオマスとは。
バイオマスとは、生物資源(bio)の量(mass)を表す概念で、一般的には「再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの」をバイオマスと呼びます。バイオマスの種類には1.廃棄物系バイオマス、2.未利用バイオマス、そして3.資源作物(エネルギーや製品の製造を目的に栽培される植物)があります。廃棄物系バイオマスは、廃棄される紙、家畜排せつ物、食品廃棄物、建設発生木材、製材工場残材、下水汚泥等があげられ、未利用バイオマスとしては、稲わら・麦わら・もみ殻等が、資源作物としては、さとうきびやトウモロコシなどがあげられます。
バイオマスから得られるエネルギーのことをバイオエネルギー、またはバイオマスエネルギーとも言います。バイオマスを燃焼することなどにより放出されるCO2は、生物の成長過程で光合成により大気中から吸収したCO2であり、化石資源由来のエネルギーや製品をバイオマスで代替することにより、地球温暖化を引き起こす温室効果ガスのひとつであるCO2の排出削減に大きく貢献することができます。したがって京都議定書のCO2削減目標をわが国が達成するためには、大幅なバイオマスの利活用が必要であるとされています。
このように世界では温暖化問題・廃棄物問題の両面からバイオマス利活用の推進に取り組んでいます。
このようなバイオマス資源が一時話題になりましたが、今はどうなっているんでしょう。
私も現職の時もあちこち見に行きましたが、実現したのは一つもありません。
行政なんて、所詮やってるふりだけ?
民間なら利益が出れば必ずやります。
当たり前ですね。
畜産なら糞尿の始末にお金がかかっていますから、それが資源になるならやらない手はありません。
でも、
実は、私が太陽熱温水器を始めた時、最初にいただいたのがバイオマスガスの仕事でした。
豚の糞尿を発酵させてメタンガスを取り出し、それを燃料とするもの。
太陽熱温水器の仕事さえやったことはない人間が、バイオマスガスの発生装置ができるか?
普通なら断るところでしょうが、ちょっと面白そうだというだけでOKしてしまいました。
真空管採熱器が正しく稼動すれば、必ず発酵すると思ったので、あまり不安はありませんでした。
しかし、意外なところで苦労したのは、本職と言われる人たちの技術と知識のなさでした。
そんなこんなで、強制循環型の真空管式太陽熱温水器のエキスパートになってしまったわけです。
計画図を以下に示します。
(構想)
- 真空管式太陽熱温水器で貯湯タンクの水を温める
- タンクのお湯を、糞尿タンクの下及び外周にパイプで循環させ熱交換する
- 循環ポンプ(2台)の電源は太陽光発電で賄う
電源は2系統で、一つは採熱器と貯湯タンク間の循環ポンプで、もう一つは熱交換用の循環ポンプ。
熱交換用の循環ポンプは直流なので、バッテリーから直接接続。
次に採熱量の検討をします。
しかし、何の情報もなく、ただ暖めてくれればいいとの話。
いくらなんでもと思いましたが、時間をかければタンク内の温度は上昇していくはず。
なのでそれほど心配はしていませんでした。
以下は、私なりに考えたものです。
ここでは、「米のとぎ汁乳酸菌」の発酵経験が大いに役立ちました。
- メタンガスを発酵させるには、タンク内温度を25℃以上に保つ必要がある
- 採熱器と熱交換の関係が不明だが、加温を続ければ発酵するはず
- 循環水は100L
- その根拠は曖昧だがやってみるしかない
- 真空管採熱器は、より多く採熱するため標準(12本)より多い18本とした
このように、明確な根拠はないままに始まったのです。
採熱器の設置
構想図にもあるように、当初は維持管理を考慮して最初は地上に置いたのです。
しかし、やはり冬期間は太陽の位置が低く、前方の高い木が邪魔になることから移動することになりました。
分離分割型の利点は、こういうときに発揮されます。
タンク一体型だとこうは行きませんので。
採熱の考え方ですが、これも全く資料も経験もなく、ましてや依頼主が「任せる」の一点張りで仕方なく考え出しました。
- 午前中に採熱
- タイマーにより12時から10分間循環ポンプを稼動させる
- 以後1時間ごとに4回繰り返す
- 終了は3時40分とした
意識したのは冬期間の採熱で、朝の9時から12時までの3時間でどのくらいの熱量か。
午後3時以降の採熱は期待できないことが分かっていたので、循環ポンプの最終稼働を3時半までとする。
つまり、3時40分以降は逆に熱を奪ってしまうことを回避するためです。
正直なところ、豚糞を発酵させる自信はありました。
しかし、その前に採熱器の循環ポンプが数日で動かなくなる現象があり、この原因が分からず苦労させられました。
安定的に動くまでに3ヶ月くらいかかったでしょうか。
設置してくれたドイツ人のAさんも分からない。
メーカーに聞いても分からない。
つまり、これは欠陥ではないかと疑いもありました。
でも私は発見したのです、トラブルの原因を。
そこはお話できませんが、この経験が私の分離分割型(強制循環型)を深く知るきっかけとなりました。
それから一ヶ月くらい経ったころだったでしょうか、ガスが発生したとの知らせが届きました。
予想通りでした。
毎日タンクを暖めれば寒い冬でも必ず発酵してくる、そう思っていました。
ただ、このガスは燃えない。
つまり、出てきたのはメタンガスだけではなかったのです。
メタンだけを分離する方法教えてくれと言われましたが、私はその筋の専門家ではないので、分からないと答えました。
そこまで知っていれば良かったのでしょうが、そこまで知っているようならもっと稼いでいます。(苦笑)
後日談ですが、メタンガスの分離に成功し燃料として使っているとのこと。
改めて連絡はありませんでしたが、正直ほっとしました。
今ならこんな複雑な方法を取らなくても、PCM採熱器を使えば簡単でしょう。
早い話、お湯ではなく熱い空気を循環させる。
これだけです。
空気は凍らないから、東北や北海道など寒い地域でも使えます。
しかも、PCM採熱器は動かさなくても過集熱の問題がなく安心していられます。
やってみませんか、畜産関係の方。