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家庭用洗剤に香料は必要なのか

 
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nonofho
元地方公務員。農業土木技術者。農業基盤整備の設計・施工に係わること42年、そのノウハウを生かして自然エネルギーの有効利用を考えています。栃木県在住。

風呂上り、下着を取り換えるときに洗剤の香りがする。

私はとても嫌なのだが、どうして香りを洗剤に着けるのか理由が良く分からないし、無臭の方が良いのではないだろうか。

 

まさか、汚れ落ちをごまかすためではないでしょうね。

 

合成洗剤というのは、第二次大戦中にドイツにおいて石鹸不足から代用として開発されたようですが、汚れ落ちは現在でも石鹸に軍配が上がると聞きます。

なのに売れているのは、どうして合成洗剤なのかが良く分かりません。

 

しかし、「家庭用洗剤でぜんそくが増加」などという記事を読むと、やはり石鹸を使っていた方が無難と思ってしまいます。

余計な心配もなく、環境にも優しいですからね。

 

家庭用洗剤でぜんそくが増加!? カナダの追跡調査で判明

 

乳児対象の大規模調査からわかった洗剤とぜんそくの関係

 赤ちゃんが生後3か月から4か月の間に家庭内で頻繁に洗剤を使うと、3歳までにぜんそくになる可能性が高まる。こんな研究結果が、2020年2月18日発行のカナダの医学雑誌『カナディアン・メディカル・アソシエーション・ジャーナル(CMAJ)』に掲載された*。
〈*Jaclyn Parks et al., “Association of use of cleaning products with respiratory health in a Canadian birth cohort”, Canadian Medical Association Journal, 192(7), E154-E161, February 18, 2020.〉

発表したのは、カナダのサイモン・フレイザー大学健康科学部教授ティム・K・タカロ博士らの研究チームだ。タカロ博士らは、カナダで子どもに対して大規模に行われた健康調査、「カナダ乳幼児健康縦断的研究」(Canadian Healthy Infant Longitudinal Development Study: CHILD Study)の結果をもとに、市販されている一般的な洗剤を頻繁に使う家庭と、あまり使わない家庭とを比較し、3歳までにぜんそくと診断される子どもの割合を調べた。

この研究にデータを提供したCHILDとは、政府機関であるカナダ保健研究所などがおよそ24億円の資金を提供し、都市部で2009年から2012年までの間に生まれた約3600人の子どもとその家族とを対象に継続的に行なわれている調査だ。子どもが母親の胎内にいるときから調査が開始される。調査対象となった家庭は、定期的に家族全員の健康に関する質問票に記入し、便・尿・臍帯血・母乳・血液などを採取され、アレルギーテストや肺機能の検査などを受ける。全国的に深刻の度を増すアレルギー、ぜんそくなどを遺伝因子と環境因子の両面から解明することが目的である。

剤使用でぜんそくリスクが有意に高まる結果に

 CHILDは家庭ごとのライフスタイルについてもアンケートを行なっており、26種類の家庭用洗剤の使用状況についても質問している。内訳は台所用洗剤、洗濯用洗剤、柔軟仕上げ剤、トイレ用洗剤、ガラス用洗剤、アルコール手指消毒剤、据え置き芳香剤、プラグイン芳香剤、抗菌スプレー剤など。ブランド名や成分では特に分類されていない。これらの使用頻度を、毎日、週1回、月1回、月1回より少ない、まったく使用しない、の5段階に分けて質問している。

そのCHILDのデータを用いたタカロ博士らの研究論文によれば、子どもが生後3~4か月の時点で洗剤を頻繁に使う家庭は、あまり使わない家庭に比べ、3歳までにぜんそくと診断されるケースが1.6倍にもなるということだ(注:この研究が使用したのは、CHILDのデータのうち2022人分)。

筆者は、論文の代表執筆者であるサイモン・フレイザー大学健康科学部のジャクリン・パークス氏にメールで取材を行なった。以下はパークス氏のコメントである。
「子どものぜんそくは公衆衛生上の大きな問題であり、特に乳幼児期において環境因子をどのように減少させるかに研究者の関心が集まっている。乳児期の洗剤暴露に着目した理由は、以下のとおりである。

(1)胎児期から生後1歳までは免疫系と呼吸器系の発達にとって極めて重要な時期である。
(2)乳幼児は一日の大半を屋内ですごし、大人よりも洗剤を使用した床面に近い空気を呼吸している。
(3)乳幼児は大人と比べて1分あたりの呼吸回数が多い。
(4)体が小さいため、体重1キログラム当たりの有害物質暴露量が大人より多い。

重要な発達の時期に有害物質に暴露すればその後の健康に重大な影響を及ぼし得る。」

論文の中で、洗剤の成分の中でも最もリスクが高いものの一つは香料であると述べられている。香料入りの洗剤や芳香剤などの製品が呼吸器の疾患と関連があることは、すでに多くの研究によって示されている、とパークス氏は説明する。
また、洗剤のタイプとして、スプレー式の害が大きいとも論文の中で述べられている。洗剤のさまざまな成分が霧状になって噴霧されるため、呼吸器から入り込みやすいためだ。

香料を含有する家庭用品を使用しないことが賢明と指摘

 マニトバ大学健康科学部小児科アレルギー・臨床免疫学セクションのエリッサ・M・エイブラムズ博士は、CMAJの同じ号にこの論文の解説を執筆し、これまでにも大人や若年層のぜんそくと洗剤の関係を調べた研究は存在したが、ぜんそくの多くは子どものときに発症するものであるため、このような調査は非常に重要だと述べている。

またこの論文は、ぜんそくのリスクのある子どもを持つ家庭にとって、簡単にできる予防法を提示していることも指摘している。そして、これまでに行われた数々の研究の結果からわかるように、「すでにぜんそくと診断された子どもやぜんそくのリスクを持つ子どものいる家庭では、香料を含有する家庭用品を使用しないことが賢明だと言えそうだ」とも述べている*。
〈*Elissa M. Abrams, “Cleaning products and asthma risk: a potentially important public health concern”, Canadian Medical Association Journal, 192 (7), E164-E165, February 18, 2020.〉

ちなみに、1904年に設立され、ぜんそくをはじめさまざまな呼吸器疾患の患者を支援する市民団体、アメリカ肺協会(American Lung Association)は、これまで発表された多くの呼吸器疾患に関する研究結果から、室内の空気を汚染しないためには「VOC(揮発性有機化合物)、香料成分、刺激成分……を含まない、または含有量を控えめにした洗剤」を使用することを推奨している。香料成分の多くはVOCであり、刺激物質である。さらに同協会は、すべての芳香剤は使用すべきではないとしている。*
〈*American Lung Association, “Cleaning Supplies and Household Chemicals”.〉

消費者にリスク開示する必要性

 ぜんそくは日本でも公衆衛生上の重大な問題だ。2008年の時点で日本のぜんそく患者は800万人だという**。実に全国民の6.2%がぜんそくを患っているのだ。*
〈*厚生労働省健康局がん・疾病対策課 「アレルギー疾患の現状等」平成28年(2016年)2月3日〉

洗剤や芳香剤などの香料成分がぜんそく発症の原因となることが、すでに多くの研究で知られているのであれば、生まれて間もない時期にそうした製品を控えることでぜんそくのリスクが少しでも減らせることを、妊娠中の女性たちにもっと広く知らせていくべきではないだろうか。

ただ、大手洗剤メーカー3社は、いずれもそのホームページのQ&Aコーナーで、自社の柔軟仕上げ剤を「赤ちゃんの衣類に使っても良い」と回答している。
そのうちの一社のホームページだけは「香りが気になる場合は、香りが弱いもの、無香性のものを選びましょう」と但し書きがしてあるが、「香りが気になる」という表現はあいまいであり、何の知識もない人がこの文言から健康への害をイメージすることは難しいだろう。

いずれにしても、柔軟仕上げ剤、洗濯用洗剤、台所用洗剤、抗菌スプレー剤などについて、もしも洗剤メーカーが「香料成分は乳幼児の健康に影響はないか」と質問されたとしても、「ある」などと回答することはおそらくないだろう。そして子どもにとっては清潔さが最重要と思われがちなこの国では、乳幼児がいる家庭ならなおのこと、洗剤や抗菌スプレーが熱心に消費されるのかもしれない。

ぜんそくのもう一つの要因「ダニ」対策も薬に頼る日本

 ぜんそくなどの発症の原因となり得るという前提に立って、大規模疫学調査で洗剤の使用状況を細かく質問するカナダと引き比べ、日本では洗剤の成分が有害だと訴える医師や保健機関はほんのわずかだ。それどころか、日本でぜんそくの大きな環境因子の一つとして挙げられているのはダニであり、その因子を取り除くために家の中の掃除をこまめにすることが推奨されている。たとえば厚生労働省所管の国立成育医療研究センターは、ぜんそく悪化への対策の例として「自宅の掃除掛けや布団の管理をこまめにすることでダニの繁殖を減らす」を挙げている。

一方で、テレビや新聞・雑誌では、ダニよけの合成洗剤や抗菌スプレー剤などが盛んに宣伝されている。「自宅の掃除掛け」「布団の管理」を「部屋に掃除機を掛ける」「布団を掃除機で吸う」と解釈せず、わが子のぜんそくを治そうと、そうした商品を熱心に使う人もいるのではないだろうか。(余談だが、日本の掃除機のゴミパックの多くには農薬処理がなされているため、掃除機を掛けると室内に農薬をまき散らすことになりかねない。「防虫」「抗菌」などと記載されている場合は、何らかの農薬処理が施されている可能性がある。掃除機を掛けるという行為ですら、注意が必要だ)*
〈*保田仁資著 『やさしい環境科学』化学同人 2003年 P.59.〉

この国は大切な発達時期にある乳幼児の健康さえ守る気がないのだろうか。産業界の顔色ばかりうかがって、ぜんそくの患者の増加を、ただ手をこまねいて見ている日本の医療に、うすら寒さを覚える。大人たちが当たり前のことを言えない、または言おうとしないこの国に、未来はあるのだろうか。

<取材・文/鶴田由紀>

【鶴田由紀】
フリーライター。1963年横浜に生まれる。1986年青山学院大学経済学部経済学科卒業。1988年青山学院大学大学院経済学研究科修士課程修了。著書に『巨大風車はいらない原発もいらない―もうエネルギー政策にダマされないで!』(アットワークス)、訳書に『香りブームに異議あり』(緑風出版)など

ハーバー・ビジネス・オンライン

 

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