インボイスについては何度も書いていますが、今回も郷原先生が「消費税は売上税!では」を記事と動画でアップされているのでご紹介します。

「消費税は預り金」という“壮大な虚構”が日本社会に停滞をもたらした

消費税は売上税とは、

消費税 消費者が払う

売上税 事業者が払う

簡単に言うと、こうなります。

今回の内容は、消費税の実態は、売上税になっているとの指摘です。

内容があまりに素晴らしいので、私も勉強のため1ページから転載させていただきます。

長いので、読むのが大変な方は動画でどうぞ。

消費税は預り金と言う虚構

冒頭、消費税の成り立ちと、法律上の問題点を指摘しています。

「消費税は預り金」だという認識は、1988年の消費税導入の際から、国民に受け入れさせようとする大蔵省(当時)・国税当局が行ってきた「キャンペーン」によって生じたものだ。

これがペテンの始まりです。

物価高対策として消費税減税を求める声は、政府に無視される一方、来年10月に予定されているインボイス(適格請求書)制度によって、消費税免税事業者は、適格請求書発行事業者の登録をして課税事業者となるか、仕入れが「消費税の仕入税額控除」の対象外となる免税事業者にとどまることで仕事を失うリスクを覚悟するか、困難な選択を迫られている。

 2019年10月に8%から10%に引き上げられた消費税率が、今後さらに引き上げられる可能性も取り沙汰されている。
 こうした中で、1989年に3%の税率で導入されて以降30年余の間、国民のほとんどが、当たり前のように信じてきたのが「消費税は預り金」という説明だ。

 しかし、少なくとも消費税法の規定からは、消費税を「預り金」と解する余地はない。過去の訴訟では、政府側が、「消費税は取引の対価の一部であり、預り金ではない」と主張し、裁判所もそれを判決で認めている。

 経済評論家の三橋貴明氏、藤井聡京都大学教授や、一部の税理士などから、「消費税は預り金ではない」という指摘が行われているが、新聞、テレビなどの大手メディアで、そのような話が取り上げられることはほとんどない。

 「消費税は預り金」だという認識は、1988年の消費税導入の際から、国民に受け入れさせようとする大蔵省(当時)・国税当局が行ってきた「キャンペーン」によって生じたものだ。

 消費税は、バブル景気の最後の時期に導入され、その後、バブルの崩壊による長期化するデフレ不況下で引き上げられ、第2次安倍政権下でさらに引き上げられる中で、「消費税は預り金」という、法律上は誤った認識が、様々な影響を生じさせてきた。

 「消費税は預り金」との認識によって生じている影響を、今、改めて問い直す必要がある。それは、インボイス制度の導入の是非という当面の問題だけではなく、消費税を今後どうしていくのか、という根本的な議論においても欠くことができないものだ。

「税の転嫁」の度合いは諸条件による

直接税と間接税の違いを、入湯税で説明されていますがこれは非常に分かりやすい。

 間接税とは、担税者(税を負担する者)が直接税金を納めず、事業者などの納税義務者を通じて納める租税のことを言う。日本の「消費税」は「間接税」とされてきたが、それは、「消費税は、事業者が納税義務者だが、税を負担するのは消費者」との理解を前提にしている。

 税の負担者が「入湯者」であり、納税義務者が「浴場の経営者」であることが、法律で明確に規定されている「入湯税」などは、典型的な「間接税」だと言える。
一方、「間接税」と言われる税の中には、「税の負担者」が、法律上明確に規定されておらず、税負担が事業者側のコストに含められて最終的に消費者に転嫁することが予定されているに過ぎないものがある。

 欧州諸国の多くで導入されている「付加価値税」がそれであり、製造から小売に至る多段階で課税される。それに対して、米国の「小売売上税」は、小売の取引段階にのみ課税される。日本の「消費税」は、前者の「付加価値税」の一種である。
「入湯税」のように明確に入湯者が税の負担者とされている税を、旅館の経営者等が旅館入館時などに受領して納付するという形態の場合、入湯者からの「預り金」と考えても差し支えはない。

 一方、「付加価値税」「小売売上税」などでは、税金相当額が購入価格に転嫁(上乗せ)されて消費者が最終的に負担することが「予定」されているだけだ。米国の「小売売上税」のように小売り段階だけ課税される場合は、「預り金」に近い。

 一方、付加価値税の場合は、転嫁の程度は、経済状況や取引当事者の関係によって異なる。転嫁が容易な状況では「預り金」に近くなるが、転嫁困難な状況では「預り金」とは程遠いものとなる。

 日本の消費税は、欧州型の付加価値税であり、転嫁が、実際にどの程度実現するかによって「預り金」としての性格が異なってくる。

 それを、導入時から、無条件に、そして、無批判に「預り金」のように認識してきたところに、根本的な問題がある。

入湯税の納税義務は浴場経営者にある

前段からの続きで、間接税について詳しく述べています。

入湯税は誰が払うのかまで、きちんと書かれていると部分が重要です。

 「間接税」の典型であり、法律上も「預り金」と言えるのが入湯税だ。

 地方税法701条は、

 「鉱泉浴場所在の市町村は、・・・鉱泉浴場における入湯に対し、入湯客に入湯税を課するものとする」

 と規定して、市町村が、「入湯客」に「入湯税」を課すとしている。そして、同法同条の4第1項で、「浴場の経営者」などを、当該市町村の条例によって「特別徴収義務者」として指定し、これに徴収させることとしている。

 第2項で、特別徴収義務者は、「納入金を当該市町村に納入する義務を負う」とされており、第3項で、「納入した納入金のうち入湯税の納税者が特別徴収義務者に支払わなかつた税金に相当する部分については、特別徴収義務者は、当該納税者に対して求償権を有する」とされている。

 つまり、「入湯税」は、「入湯客」に課される税金とされているが、「納税義務」があるのは入湯客ではなく、「特別徴収義務者」の「浴場の経営者」等である。入湯客には入湯税が課され、それを支払う義務があり、もし支払わなければ、納税した「浴場の経営者」から民事上請求を受けることになるのである。

法律上は「預り金」ではない消費税

消費税は、

事業者を納税義務者とし、資産の譲渡価格と仕入れ価格に基づいて「事業者が支払うべき消費税」を定めている。

つまり、消費税は事業者が払うものであり、消費者ではないことが明らか。

消費税=売上税

一方、消費税については、製造業者から、消費者に直接販売する小売業者まで、取引の各段階で、「販売価格×消費税率-課税仕入れ価格×消費税率」の消費税納税義務が課される。

 消費税法第4条1項で、

 「国内において事業者が行った資産の譲渡等及び特定仕入れには、この法律により、消費税を課する

 第5条1項で、

 「事業者は、国内において行った課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れにつき、この法律により、消費税を納める義務がある

 と規定し、事業者を納税義務者とし、資産の譲渡価格と仕入れ価格に基づいて「事業者が支払うべき消費税」を定めている。

 資産を購入する側の「消費者」には、納税義務を課しておらず、消費者が支払うべき消費税というのも、規定されていない。つまり、消費税法には、「消費者」は全く登場しないのであり、消費税は、法律上、消費者からの預り金ではないことは明らかだ。

 実際に、消費税に関する訴訟では、財務省(大蔵省)・国税庁の側も、消費税は預り金ではなく、「商品や役務の提供に対する対価の一部」と主張し、判決でも、

 「消費者が事業者に対して支払う消費税分はあくまで商品や役務の提供に対する対価の一部としての性格しか有しない」(東京地裁判決平成2年3月26日)

 として、そのことを明確に認めている。

売上税を断念、非課税範囲を縮小し消費税を導入

この章は、なぜ「消費税は預り金」となったのかを解説しています。

「消費税は預り金」という大キャンペーンが行われた。政府・財務(大蔵)省・国税当局も、そのような誤解が生じるような説明を行い、それがマスコミを通じて世の中に拡がった。

つまり、国家による詐欺だった。

では、なぜ「消費税は預り金」という法律の規定からあり得ない認識が国民全体に広まり、動かしようがないほど定着したのか。それは、導入の経緯と、導入時からのキャンペーンによるものだ。

 1987年、中曽根政権時代に、政府は、大型間接税としての「売上税」の導入を決定して、法案を国会に提出したが、国民からも、経済界からも、猛烈な反発を受けて断念した。その僅か1年後の1988年、竹下内閣において「消費税」の導入が決定され、法案が国会で可決成立した。

「売上税」も「消費税」も、課税資産の譲渡等に対して、一定の税率で、多段階に課税する「付加価値税」だ。「売上税」は、税率は5%とされ、課税売上1億円以下の事業者を非課税、51品目を非課税とするなど、非課税の範囲を広く認めていた。消費税は税率を3%に抑える一方、免税業者を売上3000万円以下にするなど、非課税の範囲は大幅に縮小した。

 実質的には、「売上税」と性格はほとんど変わらなかったが、税の名称が、「消費者に課される税」のような「消費税」に変更されるとともに、「消費税は預り金」という大キャンペーンが行われた。政府・財務(大蔵)省・国税当局も、そのような誤解が生じるような説明を行い、それがマスコミを通じて世の中に拡がった。

 国税庁のポスターには、

 「ちゃんと消費税も払っているのに、それを預かる人のなかにきちんと税務署に納めない人がいるなんて、ぜったい許せないじゃん

 「オレが払った消費税、これっていわば預り金なんだぜ

 などと書かれていた。マスコミも、「消費税は預り金」との認識を国民に広めていった。

「消費」税なら小売業者だけが税を預かる制度にすべきだった

制度としての欠陥を指摘しています。

「消費者が負担すべき税」という面を強調するのであれば、アメリカのような「小売売上税」にして、小売業者だけが消費者から税を預かる制度にすべきだった。

ただ、優秀な官僚がこの程度のことを知らないでやったはずはない。

 中曽根政権時代の「売上税」とは異なり、「消費税」は、国民に比較的抵抗感なく受け入れられた。そこには、導入の目的が、「直間比率を是正し、税収の偏りを解消するため」「高齢者社会に必要な福祉の財源を確保するため」などと説明され、世代間の公平を図り、国民全体で負担すべき社会保障費の財源にする税を、消費者が負担し、それを「預り金」として、事業者が税務署に納付するという認識があったからだろう。「消費税=預り金」という認識は、税の目的とよく一致していたのである。

 多くの国民は、消費税は、「預り金」として小売業者に納付したものが、小売業者から税務署にそのまま納付されると思ったはずだ。当時公務員(東京地検検事)だった私も、そのように認識しており、消費税が、消費者と直接取引をしない業者も含めた各取引段階で課税されるということは、検事を退官して弁護士登録して「個人事業主」となった時点で初めて知った。

 国民の多くは、「預り金」との認識で、前記の入湯税とか、米国の小売売上税のように、支払った事業者から直接納税されるように思ったのである。

 しかし、実際には、消費税は多段階で課税される「付加価値税」である。各段階での「転嫁」が行われるため、「預り金」的な性格も間接的なものとなる。そもそも、「消費税」という名称で、「消費者が負担すべき税」という面を強調するのであれば、アメリカのような「小売売上税」にして、小売業者だけが消費者から税を預かる制度にすべきだった。取引の各段階に課税する方式を取ること自体が、「預り金」としての性格とは矛盾している。

消費税の「理想」と「現実」

国が詐欺を働いたことを、表現を変えて指摘しています。

法律上は「預り金」ではないのに、「消費税は預り金」という認識を国民に与えることで、その「理想」を実現しようとした。

国民を騙したのだから、詐欺です。

 「販売価格に織り込まれて転嫁され、事業者に課される消費税相当額は 最終的には消費者が負担することが予定されている」というのが、消費税の公式の説明だ。

 政府としては、「消費税額全額の転嫁と全額納税」を確保するためには、事業者の販売価格に消費税相当額が全額転嫁(上乗せ)され、全額が、事業者側で「預り金」として留保されて、そのまま納税されるのが「理想」であろう。すべての取引段階で消費税分が全額上乗せされた価格になるとすれば、「消費税分全額を販売事業者が預かって税務署に納付する」という政府の「理想」に近い状況が実現できる。その「理想」を、「消費税の現実の姿」であるかのように国民に認識させるのが、消費税の導入、確実な徴税、税率の引き上げを行うために、好都合であり、そのように世の中全体が認識すればするほど、消費税の転嫁を推進することにもつながる。

 そこで、法律上は「預り金」ではないのに、「消費税は預り金」という認識を国民に与えることで、その「理想」を実現しようとした。つまり「理想」を「現実」のように思わせることで、現実化する目的で、「預り金」キャンペーンが行われたのだ。
しかし、「消費税を販売価格に転嫁することによって消費者が負担することが予定されている」という公式の説明の「予定」は、あくまで「予定」に過ぎない。実際に消費税が販売価格に転嫁されるかどうかは、経済状況や取引当事者の関係等によって異なる。転嫁できなければ、その分事業者に負担が生じる。

 インフレ・物価上昇の局面では、販売価格引き上げが行いやすいので、事業者も消費税の転嫁が行いやすいが、価格引下げ圧力が働くデフレの状況では、転嫁は容易ではない。

 消費者向けであれば、消費税分を引き上げた販売価格にしようと思っても、消費者が買ってくれなければ元も子もない。また、下請業者や部品メーカーも、競争にさらされ、取引先が支払う対価に「絶対的な上限」が設定されていれば、上限以上の対価は支払ってもらえない。その場合、請求書上は「外税」表示で消費税を転嫁した形になっていたとしても、実際には「税抜き価格」を引き下げざるを得ないことになる。その結果、実質的には消費税は転嫁できず、負担が事業者にのしかかることになる。

 各取引段階で価格に自動的に消費税分が付加され、その分を、事業者が「預り金」として別途保管し、税務署に納付するので、事業者の経営には何の影響もないというのが「預り金ドグマ」であり、政府・国税局は、そういう想定をしているのであろう(Aの状況)。しかし、実際の取引では、消費税分を除外して価格が形成されるとは限らない。経済環境や取引関係によっては、消費税分のコストも含めた価格で競争が行われることも十分にあり得る(Bの状況)。

 消費税が導入された1989年は、バブル景気の最終盤だった。3%の税率であれば、消費税の全額転嫁も比較的容易な状況であり、「Aの状況」に近かったと言える。
しかし、その1年余り後にバブルは崩壊、日本経済はデフレ不況に陥った。その後長期化するデフレの中で、価格下落圧力が高まり、消費税分の転嫁は困難になり、経済状況は、「Bの状況」に急速に変化していった。

 それに追い打ちをかけるように、1997年に消費税率が5%に引き上げられた。この時は、日本経済は不況の最中にあり、物価の下落が続いていた。物価の下落が続く中で消費者向けだけでなく、事業者間の取引でも消費税転嫁は容易ではない状況だった。その後も、物価の低迷が続く中で、消費税は、2015年に8%に、さらに2019年に10%に引き上げられたが、その間も、状況は「Aの状況」とは程遠いものだったと考えられる。

 日本商工会議所が2019年の消費税引き上げの前に行った「中小企業における消費税の価格転嫁等に関する実態調査」によれば、消費税引き上げ後の消費税転嫁の見通しについて、「転嫁できる」と回答した割合は、売上高1億円以下の事業者では、70%から75%程度にとどまっている。

 この見通しは、2015年の消費税率8%への引上げの際の転嫁状況を踏まえての回答だと思われる。景気が比較的良いとされていた2015年ですら、この程度だったとすれば、不況の最中にあった1997年の5%への引上げ時がいかに深刻だったかは想像に難くない。

 しかし、これまでの消費税をめぐる議論では、消費税導入・引上げの経済への影響は、増税施行前に商品購入を急ぐ消費者の動き(駆け込み需要)と施行後の消費の落ち込み(反動減)という、「消費に与える影響」しか問題にされてこなかった。上記のように、少なくとも、30%程度の中小事業者が消費税を十分に転嫁できないとすると、その分は、消費者ではなく事業者の負担になるはずだが、その点は全くと言っていいほど議論されて来なかった。それは、「消費税は消費者が全額負担し、事業者には影響しない」という「預り金ドグマ」に支配されているからであろう。

適切な会計処理とは言い難い「税抜き経理」

税抜き経理方式の問題点を指摘しています。

無理に無理を重ねていることが分かります。

 もともと「付加価値税」であり、法律上も「預り金」ではない消費税が、その名称に相応しく「消費者が負担する税」として、「預り金」のように扱われるようにするためには「消費税転嫁」を推進するしかない。そのための措置の一つが、消費税の経理処理のルール設定であった。

 消費税の経理処理については、「税込み経理方式」と「税抜き経理方式」の両方が認められているが、小規模企業を除き、多くの企業で、「税抜き経理方式」が採用されている。この方式では、消費税相当額は「預り金処理」と「仮払金処理」をすることになる。

 しかし、消費税相当額は預り金ではなく、取引の対価の一部だと国税当局も主張し、判決でもそのように認定されている。企業会計原則の「総額主義」からすると、「税抜き経理方式」は、企業の売上高や経費を総額として適正に表示しているとは言えない。預り金処理あるいは仮払金処理をすることは、売上および費用の「過少計上」になるはずであり、損益には影響しなくても、本来は、適切な会計処理とは言い難いやり方である。これは、「消費税=預り金」の認識を定着させ、消費税転嫁を徹底させるための「会計原則の例外的措置」ということであろう。

 多くの企業は税抜き経理方式を採用しているため、経理担当者も経営者も、消費税を預り金と誤認することになる。経理処理はいったん定着すると、容易に変更できない。「消費税は預り金」を前提に「税抜き経理方式」で長年実務を行ってきた経理担当者にとっては、「消費税=預り金」の認識は確信に近いものとなっている。

 消費税引上げの際の引上げ分の転嫁(上乗せ)を推進するための方策の一つが、「消費税転嫁カルテルの合法化」である。本来、販売価格の決定は個々の事業者が独自の判断で行うべきであり、他社と話し合って決めてはいけない。ところが、「消費税の転嫁(上乗せ)」については、競争事業者との「カルテル」で行うことを、独禁法の適用除外として認めた。

 さらに、2013年には、「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法」(「消費税転嫁対策特別措置法」)を制定し、「消費税の転嫁を拒む行為」に対して勧告等の是正措置を行うことを規定した。

 しかし、そもそも、お役所の是正勧告で、取引条件が実質的に改善できるわけがない。それは、公取委や中小企業庁が行う「下請法違反の勧告」が、中小企業の取引条件の改善に役に立っているとは言い難いことからも明らかだ。

 また、取引先業界から価格引き下げ圧力に晒されている弱小企業が集まって「価格転嫁カルテル」で、「消費税引き上げ分」の転嫁(上乗せ)を満額認めさせたところで、その後の値引き要求が強ければ、販売価格の下落は不可避だ。

 実際に、価格転嫁カルテルの公取委への届出件数を見ると、1990年の3%の消費税導入時は2049件に上っていたが、2013年の8%の引き上げでは152件、2019年の10%への引き上げでは僅か8件である。中小企業が共同して消費税転嫁カルテルによって有利な価格を実現しようとすることにほとんど実効性がないことの表れと見るべきであろう。

 結局のところ、政府が「消費税転嫁対策」などと称して上記「Bの状況」を「Aの状況」に近づけようとしても、取引価格や市場価格に直接介入はできないのでので、十分な効果は期待できないのである。

消費税が雇用・賃金に与えた悪影響

消費税が社会に与えた影響が、非常に深刻であったことの事実。

消費税の存在は、企業に人件費抑制のインセンティブを与え、賃金上昇の阻害要因となり、非正規雇用を拡大していくことにつながったと見ることができる。

これも意図的にやっていることに間違いありません。

その証拠として、派遣会社の激増があります。

 政府の「消費税転嫁対策」というのは、消費税率の引上げの際に、その「引上げ分」を価格に転嫁(上乗せ)させることが中心だが、仮に、そのような「消費税転嫁」ができたとしても、価格が下落傾向にある市場環境であれば、価格交渉力の弱い企業は、その後、取引先からの値下げ要求を受け入れざるを得ず、赤字になることもあり得る。しかし、仮に赤字になったとしても、「販売価格×消費税率-課税仕入れ価格×消費税率」の消費税は納付しなければならない。

 法人税が売上からすべての経費を控除した後の利益に課税されるのに対して、消費税は、「売上から課税仕入れを控除した金額」に課税され、「利益+非課税仕入れ」が課税対象となる。「非課税仕入れ」の最大のものは「人件費」である。消費税の負担が大きくなればなるほど、企業には、消費税の対象となる人件費抑制のインセンティブが働く。

 その人件費抑制の一つが正社員としての雇用(正規雇用)から、パート、アルバイト、契約社員などの非正規雇用への代替、だった。

 消費税の存在は、企業に人件費抑制のインセンティブを与え、賃金上昇の阻害要因となり、非正規雇用を拡大していくことにつながったと見ることができる。

輸出免税と巨額の還付金で大企業を優遇

一方で国は、輸出戻し税というもので大企業優先します。

輸出の場合に、輸出元で課税するか(原産地主義)、輸出先で課税するか(仕向地主義)、という国際的な課税権の調整に関係する問題であり、日本の消費税に限らず、欧州の付加価値税でも同様の措置がとられている。

が、やはりおかしい。

これは企業献金のお返しであろうと私は思っています。

 事業者は「販売価格から計算される消費税」から「課税仕入れ価格から計算される消費税」を差し引いた金額を納税しなければならないが、輸出品に対しては消費税が「免税」とされ、その「販売価格から計算される消費税」がゼロになるため、「課税仕入れ価格から計算される消費税」分が、逆に税務署から輸出業者に還付されることになる。輸出大企業の場合、納入する消費税より還付を受ける消費税の方が多く、還付金が巨額に上ることもある。

 これは、輸出の場合に、輸出元で課税するか(原産地主義)、輸出先で課税するか(仕向地主義)、という国際的な課税権の調整に関係する問題であり、日本の消費税に限らず、欧州の付加価値税でも同様の措置がとられている。

 したがって、「国内の中小企業が消費税の支払に四苦八苦しているのに、輸出大企業に対して多額の還付金が支払われるのは不公平」という「輸出戻し税」の外形に対する批判は、適切ではない。

 しかし、輸出業者が、課税仕入れとなる下請け業者や部品業者への支払を値引き要求で抑制した場合、その課税仕入れに、消費税額が十分に反映されているとは限らない。その場合でも、仕入れで消費税を支払ったものとして、輸出業者にその全額が還付される。

 それに加えて、輸出免税により「輸出戻し税」を受ける企業には「還付加算金」もある。国税通則法等で、「還付金等を還付する場合」に、還付金等には一定の期間を経過した場合、還付加算金が加算されることとなっているが、令和3年分の特例基準割合は1.0%となっている。これも、定期預金利率と比較すれば高利率であり、大規模な輸出事業者に利益をもたらしている。

 現在のような円安の状況では、輸出業者の価格競争力は高まっているはずだ。輸出に係る消費税が免除とされ、仕入れで支払った消費税が還付される現在の制度が、超大企業が多い輸出業者にとって有利に働いていることは否定できない。

「益税」「預り金泥棒」批判の不当性

消費税が始まった経緯と変遷、益税批判、法人税減税などに触れています。

「消費税は預り金」という「壮大な虚構」は、日本社会を深く蝕んでいる。

 欧州各国の付加価値税と、税率・税収のGDPに占める割合などを比較すれば、日本の消費税の水準は高いとは言えない。しかし、米国では、多段階の取引に課税する付加価値税は導入されていない。その理由は、多段階の取引への課税が経営基盤の脆弱な企業の経営を圧迫し、倒産を増加させたり、ベンチャー企業等の成長を妨げたりするからだとされている。

 その国の税制は、その国における企業経営の実態、社会的セーフティネットなどに関係するのであり、付加価値税の税率や税収だけで単純に比較することはできない。欧州各国は、高い率の付加価値税の一方で、社会保障を充実させ、企業の倒産廃業による失業にも手厚いセーフティネットが整えられている国も多い。

 そういう意味で、1989年に導入されてから30年余の間の日本の消費税が、日本社会に何をもたらしてきたか、改めて冷静に振り返ってみる必要がある。

竹下首相(当時)私邸周辺で「消費税廃止」を訴える人たち=1989年4月23日

 「売上税」導入が、国民からの猛烈な反発を受けて断念に追い込まれ、僅か1年後、その法的性格をほとんど変えず、法律の条文も大半を流用して、国民には「消費者からの預り金」と思わせるような「消費税」という名称で導入された。その上、社会保障財源など国民全体で公平に負担すべきものを「預り金」として消費者から徴収するという説明を前提に、事業者には負担をかけないように誤解する説明が行われたために、取引の各段階への課税という「付加価値税」であることは、ほとんどの国民は知らなかった。

 税率が売上税の5%から3%に下げられ、売上3000万円以下の事業者を免税としたことは、小規模事業者にとって消費税転嫁が容易ではないことに配慮することで、消費税への反発を緩和するためだったと思われるが、それによって、「消費税=預り金」の前提との矛盾を来すこととなった。

 消費税が、社会保障財源確保等のために消費者が負担すべき税なのであれば、消費者の側は、販売事業者の規模がどうであれ、例外なく消費税を支払うことになるはずだ。小規模事業者は消費税納付を免れる。それによって消費税預かり分の利益が生じるとして、「不当な益税ではないか」という批判につながった。

 そもそも、消費税が「預り金」という前提が誤っており、消費税分を販売価格に上乗せしたとしても、それは免税事業者の販売価格設定の自由であり、「益税」など存在しない。しかし、「預り金」を前提に考えると、消費税分を預かって納税しない免税事業者は、消費税を横領したことになる。「預り金ドグマ」が破綻していることは導入当初から明らかだったが、それはほとんどの国民には認識されず、「益税批判」の方が正当化された。

 そして、消費税導入後、バブル崩壊による深刻な不況に陥ったのに、1997年には消費税率が5%に引き上げられた。値下げ圧力にさらされた中小企業にとって、転嫁は容易ではなく、消費税の負担は重くのしかかった。それは、不況の深刻化、倒産・廃業、失業の急増と決して無縁ではない。そのため消費税納付しようにも資金がない中小事業者に対して、「消費税滞納は預り金泥棒」との批判が容赦なく襲い掛かった。

 さすがに、その後は、消費税率の引き上げは行われなかったが、2012年11月、民主党政権崩壊時に、野田佳彦首相と自民党安部晋三総裁との党首会談を受けての「社会保障と税の一体改革」をめざす「3党合意」で、再び、消費税引上げの方向性が明確化され、その後、2回の引上げで、現在の10%という税率になった。

 「益税批判」を背景に、免税点は売上3000万円以下から1000万円以下に引き下げられたが、さらに、2023年10月にはインボイス制度が導入され、小規模企業の多くが適格請求書登録をして課税事業者にならざるを得なくなる。取引の内容や課税仕入れ額を正確に記録するインボイス(適格請求書)自体は、欧州の付加価値税でも導入されており、それ自体は正当なものだ。

 しかし、「預り金ドグマ」の下での日本の消費税に導入されれば、これまで消費税の負担から守られてきた小規模事業者にとって深刻な影響を生じることになる。雇用から個人事業主、ギグワーカーなどへの代替で生じた「実質的な労働者」も含む小規模事業者が消費税の転嫁ができず、さらに厳しい状況に追い込まれることは必至だ。

 一方、大企業の側は、下請け業者、部品メーカーに徹底したコストダウンを求め原価低減に努める一方、非正規雇用を拡大して人件費を削減し、消費税の負担の軽減を図ってきた。輸出企業は、下請業者等に極限までコストダウンを求め、徹底して切り下げた外注費の「課税仕入れ」についても、所定の消費税相当額が無条件に還付され、それに1%の還付加算金まで付加されるという有利な取り扱いを受けてきた。

 法人税は大幅に引き下げられ、所得税の累進課税も軽減されてきたが、そのような「強者優遇」の税制の一方で、弱者たる中小企業に厳しい負担となる「付加価値税」が30年の間にゼロから10%にとなったことが、社会全体でバランスのとれたものと言えるのだろうか。

 そのような疑問をすべて覆い隠してしまうのが、「消費税は、社会保障財源のために消費者が負担する“預り金”であり、事業者に影響するものではない」というストーリーだったのである。

 「消費税は預り金」と、国民のほとんどが信じ込んでいる。それは、単に、消費税法の規定や法的性格についての「誤った理解」というだけの問題ではない。それ自体が、消費税の付加価値税としての本質を覆い隠し、経済に、そして、社会に与える影響が、正しく認識されることを妨げている。

 「消費税は預り金」という「壮大な虚構」は、日本社会を深く蝕んでいる。

大企業の経営に「甘さ」をもたらす税制

輸出企業だけが楽して儲かる構図が出来上がってしまった。

寺島氏が指摘する大企業の経営の「甘さ」の要因の一つに、「円安誘導」に加えて、輸出について消費税が免税とされ、課税仕入れの消費税額が高率の還付加算金も付して還付される消費税制もあるのではなかろうか。

日本総合研究所会長の寺島実郎氏は、安倍晋三前首相を官房長官として支え、経済政策「アベノミクス」を引き継ぐとしてきた菅義偉首相が退陣を表明した2021年9月、アベノミクス下で日本の経済成長が停滞し、勤労者の生活は好転しなかったこと、国内総生産(GDP)が、安倍政権が目標に掲げた600兆円に大きく届かなかったことなどについて、以下のように指摘している(【安倍・菅政権8年 「目くらまし」だったアベノミクス 世界での“日本の埋没”が加速した】)。

 日銀による異次元金融緩和を通じて為替を円安に誘導、輸出企業の業績は好転し、日銀と年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が資金を株式市場に振り向けたことで株価は上昇したが、資産を持つものとそうでないものの経済格差を広げた。

 株価や企業業績の好調を喧伝する一方で、全雇用者の3割以上が年収200万円未満の極めて厳しい生活水準を強いられている。

 そして、その原因に関して、

 円安に誘導したアベノミクスによって、輸出産業の国際競争力を高めたというよりも、円高圧力から日本企業を解放し、安易に収益を高めることができるという経営がはびこった。

 としている。

 寺島氏が指摘する大企業の経営の「甘さ」の要因の一つに、「円安誘導」に加えて、輸出について消費税が免税とされ、課税仕入れの消費税額が高率の還付加算金も付して還付される消費税制もあるのではなかろうか。

 そして、「給与所得者の4割近くが年収300万円以下」の現実は、消費税負担につながる人件費節減のための非正規雇用化、転嫁困難な消費税の負担による中小企業の経営圧迫も関係しているのではないか。付加価値税を導入しない米国とは異なり、創業後2年で消費税負担が生じることがベンチャー企業にとって不利な環境であることも影響しているのではないか。

 寺島氏が指摘するアベノミクス以降の日本経済の問題は、消費税の「預り金ドグマ」とも関係しているのではないだろうか。

以上で読み終えました。

ちょっと長かったけれど、消費税の本質と問題点がさらに良く分かったように思えます。

簡単そうで理解するのが困難な消費税。

これまでにも沢山の記事を読みましたが、これほど分かり易いのはありませんでした。

これで自信から確信に変わりました。(松坂選手の名言ですが)

本気で消費税廃止を訴えているのはれいわ新選組だけ

ところで、既存の政党で消費税を廃止を訴えている政党をご存じですか。

山本太郎・れいわ新選組は、何年も前から消費税廃止を訴えてきています。

他の政党は、増税賛成かせいぜい減税くらいなものです。

消費税廃止を主張している、れいわ新選組だけ。

これほどインチキな法律は廃止しかないんです。

山本太郎は、私が言うのもなんですが、希代の政治家であることは間違いありません。

何が凄いかと言えば、本気で国民の生活を守ろうとしていること。

しかも、その先見性や洞察力は群を抜いています。

今年の4月には政治の暴走(増税や好戦的な外交がエスカレートなど)を予言していました。

まさに今、自公政権で政治の暴走がとんでもない勢いで始まっています。

これを阻止するには、れいわ新選組が躍進し、山本太郎に首相になってもらう必要があります。

他の野党?

期待しても無駄です。

これまでできなかったことは、今後できるわけがありません。