12月に入りました。

寒くなると一般家庭でも暖房費に悩まされることになりますが、農業においても同様です。

特に施設園芸をやっておられる農家さんは、ビニールハウスの温度管理に大量の燃料(A重油)を使うので、寒波が来ると頭が痛いはずです。

施設の規模にもよるでしょうが、ひとシーズンに何百万円もの燃料代がかかると聞いたことがあります。

それでも利益が出るなら問題はないでしょうけれど、農産物は価格が一定ではありません。

先の記事でも書いたように、最近の原油高は深刻で、このまま推移するとかなり経営が厳しくなるのではないでしょうか。

ハウス栽培で使われる燃料はA重油と呼ばれるものです。

2017年には60円/L程度だったものが、2021年7月には79円/Lまで上昇しています。(赤の線)

A重油の価格の推移

価格調整が入るので、このまま急激に上がっていくことはないとは思いますが、長いスパンで考えると今後も安くなることはなさそうです。

私は農業分野においても太陽熱を積極的に利用することが、経済的にも環境にも良いと思っていますが、限界もあることも事実です。

しかし、これまでのように石油を使った施設園芸では将来が見通せません。

そのため、経営を安定させるには燃料を自前で作ることが必要であると考えます。

太陽熱と電気の組み合わせ

さて、タダのエネルギーである太陽熱利用については散々書いてきました。

【究極の太陽熱利用】どんな寒冷地でも凍らずに使えるソーラーエアーヒーターとは

しかし、これまでは個人が対象でした。

先月、ある企業にソーラーエアーヒーターを納品した際、製品の概要を説明させていただきました。

先方では、これを使って新しい製品の開発を目指しているようなので、少しでも役に立つ情報をお伝えしたかったのですが・・・

単純に暖房用にするか、それとも別な用途に使うか。

もちろん結論などは出ませんが、後日思ったのは、太陽熱と電気の組み合わせでした。

個人住宅の暖房なら別ですが、大規模な施設を考えた時には初期投資がかかっても、燃料が輸入できなくなった時(可能性は低い)などに有利になります。

また、原油の価格に一喜一憂しなくても済むようにもなります。

それで、あまり興味のなかった筑能科技社のカタログを再度読み返してみました。

すでにヒートポンプとの組み合わせをやっていますので。

このシステムは大規模な施設向けで、私には関係ないと思いぼんやりとした理解しかしていませんでした。

しかし、改めて読んでみると、ソーラーエアーヒーターで得た太陽熱(空気)を、ヒートポンプを使い24時間暖房すると言うもの。

ヒートポンプとは、エアコンやエコキュートなどで使われている技術で非常に優れた方式です。

空気を圧縮して熱を発生させるわけですから、電気さえあれば良いので石油などの燃料はいりません。

であれば、ソーラーエアーヒーターにヒートポンプで燃料を使わない施設園芸が可能となります。

今や電気は日本中どこでも発電していますから、石油のように海外から運んでくる必要はありません。

問題はコストですが、費用対効果を計算してみれば簡単に結論は出るはずです。

効果があるとすれば、初期投資はかかっても安定した農業経営ができるようになります。

筑能科技社の具体例

ここで一例を紹介します。

情報が少ないのですが、中国での大規模な施設園芸です。

まだ工事中のようですが、前面には16枚のソーラーエアーヒーターを並べています。

採熱量は8×2列×30MJ/枚=480MJ。

その後ろにヒートポンプが8台並んでいます。

この施設のシステムは、以下の図のようなものであろうと推測します。

“スペース1号”超低温ソーラーヒートポンプ省エネの秘密

1.ソーラーエアーヒーターで採熱した空気を施設の下から吹き出す

2.その空気をヒートポンプで回収・圧縮、熱を取り出す

3.これの繰り返し

実に合理的なシステムではないでしょうか。

なお、一般的な暖房は以下のように使うようです。

まとめ

ようやくソーラーエアーヒーターが売れ始めました。

3年前にサンプルとして仕入れましたが、問い合わせは多いものの全く売れませんでした。

多くの方々は、温風を得るのに電動ファンが必要となることや、性能に疑問があり、イマイチ乗り気にならなかったようです。

しかし、太陽熱温水器の200Lは真空管が24本なのに対し、ソーラーエアーヒーターは30本です。

蓄熱棒があってもなくても、真空管は同じサイズなので1本の採熱能力は同じです。

そのため、真空管の本数が多い分だけ採熱が多くなります。

電源については、ソーラーパネルを1枚用意すればファンくらいは簡単に動かせますから欠点とは言えません。

これから先、石油が高騰する可能性が高いことを考えれば、全てのエネルギーを太陽熱と電気で賄う選択肢は悪くないと思います。

私もまだ十分理解していませんが、興味がある方はメーカーに詳細を問い合わせることもできます。

お気軽にお問い合わせください。